九二式八屯牽引車

九二式八屯牽引車の詳細

九二式八屯牽引車（92しき8とんけんいんしゃ）は、大日本帝国陸軍が1932年に正式に採用した砲兵用の牽引自動車です。この車両は、砲兵部隊において配備された重砲の牽引を主な任務としており、特に八九式十五糎加農砲の牽引に多く利用されました。

1. 概要

九二式八屯牽引車は、重砲の運用が求められる中で、1931年に新しい牽引車の開発が必要とされるようになりました。その背景には、1923年に開発された試製七五馬力牽引自動車が工作精度の問題で機関部の熔損が続出したことが関係しています。この改善を踏まえ、東京瓦斯電気工業株式会社に設計と製作が依頼され、1932年に試作車輛が完成しました。

試作後にはさまざまな地形で300kmの運行試験が行われ、その結果、堅牢な構造と十分な運行能力が確認されました。ただし、試作車輛は重量が8786kgと設計上の基準を超過しており、重心が後方に偏りがちだったため、改良が求められました。完成した九二式八屯牽引車は、価格面でもコストパフォーマンスに優れ、運用しやすい車両として評価されました。

2. 構造と機能

九二式八屯牽引車の設計は、姉妹である九二式五屯牽引車に類似しており、総重量は約8トンで最大速度は約16km/hです。特に注目すべきは、車体後部に装備されたウィンチで、これは5トンの荷重に耐えられる設計となっています。

エンジンには直列6気筒水冷式ガソリンエンジンが採用されており、900回転で80馬力、1600回転で130馬力を発揮します。さらに、変速機は常時噛合歯輪式で前進4段、後退1段を備えています。そして、特徴的なのは、懸架装置が無限軌道式で、衝撃吸収を可能にする設計がなされていることです。

3.運用に関する規定

砲兵部隊では、九二式八屯牽引車を利用して火砲を一緒に運搬します。具体的には、牽引車の背後に弾薬車を接続し、さらにその後方に砲を牽引するなど、計画的な運動に基づいて運用されます。指揮官が号令を出し、部隊は賢明に指示された速度で行動します。

分隊が前進する際には、弾薬車との距離を保ちながら進行します。また、運転の始動や停止、接続と離脱の手順が厳密に定められており、無駄のない効率的な運用が求められました。

4. 諸元

• - 自重：8トン
• - 全長：4.3m
• - 全幅：2m
• - 全高：2.58m（幌あり）
• - 最低地上高：0.3m
• - 轍間距離：1.68m
• - 登坂能力：3分の1
• - 搭乗人員：7名

九二式八屯牽引車は、当時の日本陸軍において重要な役割を果たし、その後の戦闘での運用においても大きな貢献をしました。

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