八九式十五糎加農砲

八九式十五糎加農について

八九式十五糎加農（はちきゅうしきじゅうごせんちかのん）は、1920年代から1930年代初めにかけて大日本帝国陸軍で開発・導入された重加農です。この武器は主に、日中戦争やノモンハン事件、さらには第二次世界大戦において帝国陸軍の主力として採用されました。通常は「八九式十五糎加農砲」とも呼ばれます。

開発と仕様

本砲の開発は陸軍技術本部の新しい兵器研究方針の下で、1920年の7月に始まりました。1922年10月に設計が完了し、様々な試験を経て、1929年10月に正式に八九式十五糎加農として制式化されました。その後、砲脚が閉脚式から開脚式に改修され、同年9月から始まった満州事変には急遽改良モデルが投入されています。1933年には第5号砲が機能良好と認められ、製作図も修正されました。

この砲は、口径149.1mm、砲身長5,963mmの三層砲身を備えています。駐退復座機を搭載し、発射速度は1分間に約1発、最大射程は18,100mに達します。砲は九三式榴弾と尖鋭弾を使用し、装薬の種類によって射距離を調整することが可能です。

移動時には、砲身車と砲架車に分けられ、それぞれ九二式八屯牽引車により牽引されました。しかし、射撃時には二車を結合し射撃体勢を整える必要があり、準備には約2時間を要しました。この問題を解決するため、1940年には単車牽引式の改良型も開発されました。

実戦での運用

実戦初投入は満州事変であり、その後も八九式十五糎加農は日中戦争やノモンハン事件などで使用されました。特にノモンハン事件では、80門以上の重砲が投入され、ソ連軍に対して28,000発の砲撃を行いました。しかし、地形的制約から苦戦を強いられました。

太平洋戦争の緒戦では、香港、シンガポール、フィリピンでの戦闘に参加し、その長射程と大火力を生かしました。シンガポール戦ではイギリス軍指揮官が本砲の威力に脅え、降伏を決意したという逸話もあります。一方で、戦況の悪化に伴い、重加農の運用は次第に困難になりました。

沖縄戦では独立重砲兵第100大隊が本砲を使用し、隠匿陣地から不規則な砲撃を繰り返しました。この戦闘では本砲が活躍し、敵軍への効果的な攻撃を行い続けました。

現存する砲

八九式十五糎加農の中で現存するものには、沖縄戦で使用された第137号砲が含まれます。この砲は発見され、レストアを経て靖国神社に展示されています。他にも沖縄県内で原型を保った状態で展示されているものがあります。これらの現存砲は歴史的価値を持つ貴重な遺産とされています。

構造の詳細

この砲は、特殊な閉鎖機を備えており、撃発装置と安全装置も整っています。駐退機と復座機は水圧式で、射撃時の反動を受け止めるための設計がされています。これにより連続して射撃が行える高い精度を保っていました。方向射界は左右に40度、仰角は+43度から-5度まで調整可能であります。

以上が八九式十五糎加農についての概要です。歴史的背景や技術的な特性についても、興味深く研究が続けられています。

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