九五式重戦車

九五式重戦車

九五式重戦車は日本陸軍が昭和10年、すなわち1935年に制式化した重戦車であり、その名称は皇紀の下二桁に由来しています。また、秘匿名称として「ロ号」とも呼ばれています。この戦車は、日本で作られた初の本格的な重戦車として位置づけられています。

前史

第一次世界大戦後、戦車技術は急速に発展しました。当初、ルノーFT17のような軽戦車が全周旋回砲塔を備える先進的なデザインを見せ、その後、各国は戦車の形態に関してさまざまな試行錯誤を重ねました。その中で多砲塔戦車の概念が生まれました。イギリスのA1E1 インディペンデント重戦車など、多砲塔戦車が各国で開発されましたが、装甲の薄さや生産コストの高さから、大規模な運用には至りませんでした。

九五式重戦車の概要

九五式重戦車は、これまでの多砲塔戦車の設計思想を引き継ぎながら、装甲防護力や火力の向上を図った車両です。試製一号戦車を基盤に、1932年から開発が進められ、1934年には試作車が完成しました。全長6.47 m、全幅2.7 m、全高2.9 mの大型の車両で、装甲も当時としては頑強です。

車両は、副砲塔に三十七粍戦車砲を装備し、主砲塔には九〇式五糎七戦車砲と機関銃を搭載しています。乗員は5名で、各々が特定の役割を持っていました。装甲厚は前面35 mm、側面30 mm、後面25 mmとこの時期の日本戦車の中では厚く、リベット接合により製造されています。

火力

九五式重戦車の主砲には、弾薬の種類に応じて高い威力を発揮できる九二式榴弾と九五式徹甲弾を使用可能です。副砲は37 mm砲であり、機関銃を2門搭載しています。これにより、敵に対する火力支援を強化する設計がなされています。主砲は高低射界や方向射界に優れ、局面での柔軟な運用が可能でした。

機動力

本車両は後輪駆動方式を採用しており、操向装置にはクラッチ・ブレーキ方式を使用しています。290馬力のBMW IV水冷直列6気筒ガソリンエンジンを搭載し、最大速度は22 km/hを実現しました。行動能力や登坂能力も良好で、そこから得られる運動性能は他の同時期の戦車と比べると高いものでした。

生産

九五式重戦車は制式化されながらも、実際には生産は大阪陸軍造兵廠で4輌に留まりました。この背景には、軽快な戦車に機動力を求める方針があり、実戦に投入されることはありませんでした。数輌は試作や教育用途に留まったとされていますが、九五式重戦車はその後、兵器としての重要性を持つ一つの象徴として存在し続けました。

結論

このように、九五式重戦車は日本陸軍における一つの重要な試みと言えるでしょう。先進的な設計と火力を持ちながらも、短命に終わったその登場は、戦車技術の進化を示す重要な一章を成しています。

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