BMW IV

BMW IV：高高度飛行を切り開いた航空機用エンジン

BMW IVは、1920年代にバイエルン州のBMW社が開発した水冷直列6気筒航空機エンジンです。その高い性能と信頼性から、多くの航空機に搭載され、航空史に名を残す名機となりました。

BMW IIIaからの進化

BMW IVは、同社の先行機種であるBMW IIIaをベースに開発されました。BMW IIIaのボアを拡大することで排気量を増やし、出力は250馬力（180kW）に向上しました。この出力向上は、当時の航空機エンジンとしては画期的なものでした。

驚異の高高度性能

BMW IVの真価は、その卓越した高高度性能にありました。1919年、先駆的な飛行家フランツ・ツェノ・ディーマーはBMW IVを搭載した航空機で、高度9,750mという驚異的な高度到達記録を樹立しました。これは、それまでの記録を大きく塗り替える快挙であり、BMW IVの高性能を世界に知らしめることとなりました。ディーマー自身も、さらに高度を上げることができたものの、酸素供給の限界で断念したと語っています。

国際的な展開とライセンス生産

BMW IVの高い性能は、ドイツ国外でも高く評価されました。ユンカース社では、L2としてライセンス生産され、さらに発展型であるL5の開発にも繋がりました。日本でもその高い性能に着目され、1920年には川崎飛行機（後の川崎重工業）が研究用として数機を輸入しました。その後、1924年には川崎とBMW社の間でライセンス契約が締結され、本格的な導入が始まりました。研究用として輸入されたエンジンの一部は、後に戦車用として改造され、陸軍に納入されたという記録も残っています。

多様な搭載機

BMW IVは、数多くの航空機に搭載されました。その搭載機は、ドイツの代表的な航空機メーカーであるアラド社、アルバトロス社、ユンカース社が製造した様々な機種に及びました。具体的には、アラド SC I、アルバトロス L 72、ユンカース A 35、ユンカース F 13、ロールバッハ Ro.VIIIなど、当時の航空機界を代表する機種に搭載され、その性能を存分に発揮しました。
さらに、日本においては、九一式重戦車や九五式重戦車といった、陸軍主力戦車への搭載も確認されています。この事実からも、BMW IVが持つ高い信頼性と耐久性がうかがえます。

BMW VIへの発展

BMW IVは、その後のBMW社のエンジン開発にも大きな影響を与えました。BMW IVを基に、V型エンジンに設計変更し、気筒数を2倍にした発展型がBMW VIです。BMW VIは、BMW IVの優れた技術を継承しつつ、さらなる高性能化を実現しました。

まとめ

BMW IVは、高い出力と高高度性能を両立させた、当時としては画期的な航空機エンジンでした。その優れた性能と信頼性から、多くの航空機に搭載され、ドイツのみならず日本においても航空機産業、そして戦車開発に大きな影響を与えました。BMW IVは、20世紀初頭の航空機技術発展において、重要な役割を果たしたと言えるでしょう。その技術は、後の航空機エンジン開発にも大きな影響を与え、現代の航空機技術の礎を築く上で重要な存在となりました。

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