九八式陸上偵察機

九八式陸上偵察機

九八式陸上偵察機（きゅうはちしきりくじょうていさつき）は、日本の三菱重工業が設計し、昭和14年11月に日本海軍に採用された偵察機です。機体の略符号は「C5M」とされています。この機体は、当時陸軍で使用されていた九七式司令部[[偵察機]]を海軍用に改良したものであり、日本海軍が陸軍機を使用する数少ない例の一つとなっています。

機体の開発背景

日本海軍は、初期には陸上偵察機の開発にあまり力を入れていませんでしたが、中国大陸での戦闘が激化する中で、高速かつ長距離を飛行できる偵察機の必要性を認識し始めることになります。その際、陸軍の九七式司令部[[偵察機]]が良好な戦果を上げていたため、これを海軍用に改造して採用することに決定されました。

開発にあたっては、エンジンを陸軍のハ8から、瑞星一二型（陸軍名ハ26）へと換装し、艤装を海軍の仕様に変更した機体が20機製作され、昭和14年に九八式陸上偵察機として正式に採用されました。その後、この型は昭和17年4月7日に九八式陸上偵察機一一型と改称されます。さらに、昭和15年にはエンジンを栄一二型に改装し、30機が新たに生産されました。この改良型は昭和17年に九八式陸上偵察機一二型と名付けられました。

性能と評価

九八式陸上偵察機一一型の特徴は、全長8.7m、全幅12.00m、全高3.46mで、装備重量は2,197kgに達します。最高速度は468km/hで、2名の乗員を搭載して航続距離は1,167kmを誇りました。また、武装として7.7mm機銃が1門搭載されていました。

一方、一二型は全装備重量が2,345kgに増加し、最高速度が487km/hに向上しました。これにより、諸性能が向上したとはいえ、原型である九七式司令部[[偵察機]]と同様に、視界や離着陸性能には課題が残っていました。

特にエンジンの換装によって自重が増加したため、離着陸性能が低下した点が批判されました。そのため、搭乗員の評判はあまりよくなく、九七式艦上[[偵察機]]の方が実戦部隊では好評だったという意見もあります。このことが理由となり、九八式陸上偵察機の生産機数は合計でわずか50機に留まりました。

しかし、特に華南方面での偵察任務では、高速性能を生かして活躍する機体も存在しました。太平洋戦争が始まった後も、少数ではありますが、南方での偵察や連絡任務に従事しました。昭和17年の夏には、二式陸上偵察機が採用され、その後交替する形で退役しました。

総括

九八式陸上偵察機は、その生産数や評価には限界があったものの、太平洋戦争開戦初期において重要な役割を果たしたことは間違いありません。兵器としての特性や戦術上の必要性から生まれたこの偵察機は、日本海軍の偵察任務に一定の寄与をしたと言えるでしょう。

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