九六式中迫撃砲

九六式中迫撃砲の概要

九六式中迫撃砲（96しきちゅうはくげきほう）は、大日本帝国陸軍が採用した迫撃砲で、1939年（昭和14年）4月に制式化されました。この砲は、駐退復座機を備えた大口径の迫撃砲であり、ストークブラン式迫撃砲の拡張版にあたります。

誕生の背景

九六式中迫撃砲の開発は1930年代の初頭から始まりました。日本陸軍の科学研究所では、当初毒ガス弾の発射機として口径10 cmと15 cmの研究が行われていました。その頃、陸軍技術本部も同様に15 cmの迫撃砲を開発しており、両者の担当者は合同会議を開いて、迫撃砲の軽・中・重それぞれの開発を行うことに合意しました。

この会議により、軽口径は九四式軽迫撃砲、重口径は九六式重迫撃砲として結実し、中口径は150 mmの使用を念頭に置いて設計が進行しました。1934年に設計が始まり、1935年には大阪工廠での試製が開始され、試験を経て実用的な試験に入った結果、1939年に制式化されました。

技術的な特徴

九六式中迫撃砲は、前装式の滑腔砲であり、砲口から有翼弾を射出します。その設計は九四式軽迫撃砲を基にされていますが、墜発式と撃発式の併用が特徴です。この併用により、二重装填のリスクを低減し、より安全に弾薬を発射できるように工夫されています。

本砲の駐退復座機は高い技術を要し、駐退機と復座機の相互作用により射撃時の安定性が保たれています。特に、駐退機に水圧式が採用され、復座機にはばね式が使われているため、重量が増加し、放列砲車の重さは722 kgという大きな数値に達しました。

生産と実際の運用

ただし、制式化された後も本砲の生産は限られており、昭和12年に大阪陸軍造兵廠で3門が製造されたのみでした。その後は、本砲用のガス弾が製造されず、九四式軽迫撃砲の使用が中心となりました。市において生産された数量は非常に限られており、一説には約90門とも言われていますが、実際の生産数は戦争が進行するにつれて新型の迫撃砲への移行があったため、ほとんど増えませんでした。

本砲は存在こそしていたものの、運用面では九七式中迫撃砲や他の新型に取って代わられ、配備の機会は限られました。このように、技術的には優れた側面がありながらも、その生産性や運用効率の面では新型に遅れを取り、結果的には短命に終わる兵器となったのです。

まとめ

九六式中迫撃砲は、大日本帝国陸軍の迫撃砲の中で重要な位置を占めていましたが、その開発の経緯や生産面での課題は、戦争の状況と密接に関連しています。この兵器は、当時の技術の粋を集めたものでありながら、結果的には後続の新型迫撃砲に道を譲る形になりました。

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