滑腔砲

滑腔砲とは

滑腔砲（かっこうほう、英: smoothbore）は、ライフリングが施されていない砲身を持つ大砲のことを指します。ライフリングとは、銃砲身内に刻まれた螺旋状の溝で、弾に回転を与えることで弾道を安定させる役割があります。この概念は15世紀末に発明されましたが、滑腔砲はそれ以前から存在していました。

滑腔砲は火器の誕生以来、長い間使用されてきましたが、ライフリングの普及が始まったのは19世紀末からで、それに伴って大砲も後装式へと進化しました。20世紀の初めまでには、ほとんどの大砲がライフル砲に取って代わられ、その命中精度や有効射程の高さが支持されました。

戦車砲との関係

20世紀後半になって、戦車砲や小口径迫撃砲、グレネードランチャーの分野において滑腔砲が再び注目されるようになりました。これは、装甲防御力が向上した戦車に対抗するために必要な高威力の砲が求められ、重量制限の中で大口径の砲を取り入れることが難しくなったためです。

特に、高度な防御を持つ戦車を撃破するために開発された弾薬としては、HEAT弾（高性能対装甲弾）やAPDS弾（弾体分離徹甲弾）があります。しかし、ライフリングを持つ砲身で発射した際、これらの弾薬が持つ特性により、威力や命中精度に悪影響が及ぶことが明らかになりました。具体的には、HEAT弾はメタルジェットが遠心力の影響を受け、弾道の安定性が損なわれることで威力が減衰します。一方、APDS弾の場合、弾体を高速回転させることで逆に命中率が低下する事例も報告されており、そのため再び滑腔砲の使用が普及しました。

滑腔砲の歴史的進展

初めての滑腔戦車砲は、イギリスのロイヤル・オードナンス製の105mmライフル砲L7に対抗する形で、ソ連のT-62戦車に搭載された55口径115mm滑腔砲U-5です。このU-5砲の事例では、APDSにおいて装弾筒の分離に関して問題が発生したため、滑腔砲の全面的な採用には至りませんでした。しかし、その後のT-64戦車に搭載されたD-68 115mm滑腔砲や、T-72に採用された2A46 125mm滑腔砲など、ソ連はその後も滑腔砲の導入を進めました。

西側においては、ラインメタル社の120mm滑腔砲Rh120の採用が最初となります。1960年代から1970年代にかけて開発された戦車の大半は滑腔砲を搭載していますが、イギリス軍のチャレンジャー2戦車のように、ライフル砲を装備したケースも見られます。

結論

滑腔砲は、その特性や歴史を通じて多くの軍事技術に影響を与えてきました。敵に対抗するために進化し続ける砲弾と砲を理解することで、戦場における戦略的な判断の重要性を再認識することができます。

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