九六式小型水上機

九六式小型水上機の概要

九六式小型水上機（きゅうろくしきこがたすいじょうき）は、1936年に日本海軍に正式採用された潜水艦搭載用の水上機です。この機体は、渡辺鉄工所によって開発・製造され、機体略番はE9Wとされています。連合軍では「Slim」というコードネームが付けられたこの機体は、当初は「九六式小型水上偵察機」と呼ばれていましたが、後に現在の名称に変更されました。

開発の背景

日本海軍は、1934年に九一式水上[[偵察機]]の後継機として、新たな潜水艦用偵察機の開発を渡辺鉄工所に指示しました。この新しい機体は、その名も「九試潜水艦用偵察機」と呼ばれ、1935年2月には試作1号機が完成しました。機体は木製と金属製の複合構造で、複葉機の形状をしています。双フロートを持ち、安定した浮力を確保する設計となっていますが、潜水艦の格納庫に収めるためのサイズ制限により、操縦性の改善には時間を要しました。そのため、正式な採用が行われたのは1936年7月と、開発には困難が伴いました。

使用と性能

九六式小型水上機は、分解や組み立ての所要時間が約3分弱という高速性が特徴で、潜水艦搭載機としては優れた性能を持っていました。ただし、潜水艦が海中から浮上し、本機を組み立て、エンジンの暖機運転を行い、カタパルトから発進するまでには約40分を必要としました。1937年からは巡潜3型をはじめとした様々な潜水艦に搭載され、南方での隠密偵察任務を果たしました。

その後、零式小型水上機が就役することで、九六式小型水上機は第一線から退くことになりますが、1940年までに生産された機体は33機に留まり、最後まで海軍の任務に貢献しました。

機体スペック

• - 全長: 7.64 m
• - 全幅: 9.98 m
• - 全高: 3.70 m
• - 主翼面積: 22.08 m²
• - 自重: 847 kg
• - 全備重量: 1,210 kg
• - 発動機: 日立「天風」11型 空冷星型9気筒 300hp
• - 最大速度: 233 km/h
• - 巡航速度: 148 km/h
• - 実用上昇限度: 6,740 m
• - 航続距離: 732 km
• - 上昇力: 9'41"/3000 m
• - 武装: 7.7mm機銃×1
• - 乗員: 2名

参考文献

この情報は、野沢正の著書『日本航空機総集 九州・日立・昭和・日飛・諸社篇』に基づいています（出版協同社、1980年、31-33頁）。

関連項目

• - 偵察機・哨戒機の一覧
• - 潜水艦搭載偵察機
• - シャム国海軍水上偵察機

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