九十九王子 (御坊市)

御坊市の九十九王子について

九十九王子は、和歌山県御坊市に存在する神社のひとつで、熊野古道の紀伊路・中辺路沿いに位置しています。これらの神社は、特に12世紀から13世紀に皇族や貴族たちの熊野詣に伴い、名高い熊野修験によって集合的に形成されたものです。参詣者の安全と守護を祈願されており、当時の熊野信仰の影響が色濃く残る神社群です。しかし、1221年の承久の乱以降、京からの熊野詣が減少し、紀伊路自体も衰退していきました。これにより、神社は荒廃し、姿を消しつつあります。

江戸時代に入ると、熊野詣はかつての重要性を失ってしまいましたが、紀州藩による顕彰の試みもあったものの神社群の活気を取り戻すには至りませんでした。特に明治時代以降は、神道の国家神道化や市街化の影響を受け、多くの神社が合祀や廃絶を立たざるを得ない状況になりました。そのため、九十九王子の旧社地の多くが失われ、残された神社もかつての繁栄を知る者は少なくなりました。

本記事では、特に御坊市に存在する数社の九十九王子について詳しく説明します。

御坊市の九十九王子

御坊市には、おおよそ6社の九十九王子が存在し、なかでも代表的な神社について見ていきます。

善童子王子

善童子王子は、高家王子から南西に進んだ場所に位置する小祠です。歴史的な記録によると、1109年には大般若経の法要が行われたことが記されています。また、近世の記録では村の人々から出王子や出童子と呼ばれ、地域の氏神として崇敬されていた事がわかります。その後、1909年に湯川神社に合祀されました。

愛徳山王子

愛徳山王子は、善童子王子の近くに位置する神社で、八幡山の北側のみにある石碑が残っており、愛徳山王子跡地を示しています。この神社も1908年に吉田八幡神社に合祀された歴史があります。

九海士王子

九海士王子は、八幡山の南麓に位置し、旧社地は現在ミカン畑として利用されています。参詣記録や、近世に道成寺の伝説と結びつく形で名が知られるようになったのが特徴的です。1908年に吉田八幡神社に合祀され、旧神像は道成寺で祀られています。

岩内王子

岩内王子は日高川の左岸に位置し、歴史的な文献にはその名が何度も登場します。日高川の氾濫によって旧社地が獲得する影響が強く、その後1908年に熊野神社に合祀されました。現地には遺構が残り、参詣道としての歴史が色濃く残されています。

塩屋王子

塩屋王子は、境内にあたる丘陵上に位置し、地元では美人王子と呼ばれています。美人王子の名の由来は、祀られている神像の美しさに由来すると言われており、2018年には史跡に指定されました。

これらの神社は、かつての熊野信仰の深いルーツを持っており、現代においてもその歴史が地域とともに生き続けています。御坊市を訪れた際には、これらの神社を巡り、その歴史を感じ取っていただきたいと思います。

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