九州大学医療技術短期大学部

九州大学医療技術短期大学部は、かつて福岡県福岡市東区に設置されていた日本の国立短期大学です。「九大医短」または単に「医短」という略称で親しまれました。1971年に九州大学医学部に併設される形でその歴史を開始し、2002年度入学生を最後に学生募集を終了した後、2006年3月をもって正式に廃止されました。これは、九州地域における国立医療系短期大学としては最も長い歴史を持ち、全国的に見ても最も長く存続した国立の医療系短期大学の一つとして知られています。

概要と特色

本学は、高度な知識と技術を持つ医療技術者の育成を目的として設立されました。教育においては、併設元の九州大学医学部との連携が強く、九州大学病院での実践的な臨床実習がカリキュラムに組み込まれていました。これにより、学生は実際の医療現場に近い環境で専門スキルの習得に励むことができました。

学風としては、同じキャンパス内に位置する九州大学医学部の学生との交流も盛んであったとされています。また、教育の一環として特徴的な宿泊研修を実施しており、1年次には4月に、3年次には10月に宿泊を伴う研修が行われました。研修場所としては、福岡市内の志賀島や「九大山の家九重研修所」などが利用されていました。これらの研修は、学生間の親睦を深めるとともに、協調性や自立心を養う機会となっていたようです。

沿革

九州大学医療技術短期大学部の源流は、明治時代に遡ります。1903年に京都帝国大学福岡医科大学附属医院に看護婦養成科が設置されたのが始まりです。その後、九州帝国大学への改称や組織改編を経て、看護員養成科、産婆養成科、診療エックス線技師学校、衛生検査技師学校など、様々な医療技術者養成機関が設立・改組されていきます。

これらの前身校を統合・発展させる形で、1971年 4月1日に九州大学医療技術短期大学部が開学しました。当初は看護科、診療放射線技術科、衛生技術科の3学科が設置されました。開学後、学生数は徐々に増加し、それに伴い入学定員に対する在籍者数も安定していきます。1976年には学科名称がそれぞれ看護学科、診療放射線技術学科、衛生技術学科に変更されました。さらに、1978年 4月1日には助産師を養成する専攻科として助産学特別専攻が設置され、より専門的な教育体制が拡充されました。

本学は四半世紀以上にわたり医療技術者養成に貢献しましたが、大学組織再編の流れの中で、2002年度入学生を最後に学生募集を停止しました。そして、在学生の卒業を待って、2006年 3月20日をもって正式に廃止され、その役割を九州大学医学部保健学科などに引き継ぎました。

組織と教育内容

廃止時点における本学の組織は、以下の3学科と1専攻科で構成されていました。

看護学科: 看護師の受験資格取得を目指す学科でした。
診療放射線技術学科: 診療放射線技師の受験資格取得を目指す学科でした。
衛生技術学科: 臨床検査技師の受験資格取得を目指す学科でした。
専攻科助産学特別専攻: 助産師の受験資格取得を目指す専攻科でした。

各学科・専攻科では、専門性の高い教育と実習が行われ、将来医療現場で活躍するための基盤が築かれました。また、研究活動も行われており、その成果は『九州大学医療技術短期大学部紀要』として公表されていました。

施設と学生生活

本学は、九州大学のキャンパス内にありながら、短大独自の建物を持っていました。当時の建物面積は約9,300平方メートルに及び、本館、講義棟、体育館などが整備され、学生は恵まれた環境で学ぶことができました。

学生生活においては、体育系（テニス、バドミントン、バスケットボール、バレーボール、軽登山など）や文化系（軽音楽など）のクラブ活動が独自に展開されていました。加えて、多くの学生が準硬式野球、テニス、バレーボール、ラグビー、サッカー、剣道、弓道、水泳、アイスホッケー、スキーといった九州大学本体のクラブ団体に参加し、多様な交流を深めていました。学園祭は「堅粕祭」という名称で知られ、学生たちの文化活動発表や親睦の場となっていました。

卒業後の進路

九州大学医療技術短期大学部の卒業生は、そのほとんどが取得した医療系資格を活かし、専門職として社会に貢献しました。主な就職先としては、九州大学病院をはじめとする国公立病院や私立病院など、多岐にわたる医療機関がありました。

また、さらなる研鑽を積むため、四年制大学や他短期大学の専攻科への編入学・進学を選択する学生も少なくありませんでした。看護学科からは九州大学理学部、高知大学、佐賀医科大学、大分医科大学など、診療放射線技術学科からは岐阜大学、大阪大学など、衛生技術学科からは東京医科歯科大学、神戸大学、岡山大学、九州工業大学など、様々な大学への編入学実績がありました。

象徴

九州大学医療技術短期大学部では、カレッジマークとして九州大学と共通のデザインを使用していました。これは、本学が九州大学の伝統と権威を受け継ぎ、その一員として医療技術教育を担ってきたことを象徴しています。

約35年間にわたり、多くの有為な医療技術者を輩出した九州大学医療技術短期大学部は、その使命を終えましたが、その歴史と教育理念は、現在の九州大学医学部保健学科などに引き継がれています。

参考文献

全国学校総覧各年版
全国短期大学高等専門学校一覧各年版
蛍雪時代各年版

関連項目

廃止された日本の短期大学一覧
九州大学
九州大学医学部保健学科

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