九鬼村

九鬼村：熊野灘に面した歴史ある村落

三重県尾鷲市の南東部、熊野灘に面した地域に、かつて九鬼村が存在していました。この記事では、九鬼村の地理、歴史、行政、教育、そして名所旧跡について詳細に解説します。

1. 地理

九鬼村は、熊野灘に広がる美しい海岸線と、八鬼山、頂山、谷ノ山といった山々に囲まれた自然豊かな地域でした。九木崎、ナサ崎、橋掛崎などの岬も特徴的な地形です。1957年、国鉄紀勢本線九鬼駅が開業し、交通の便も向上しました。

2. 歴史

2.1 村名の由来

村名は、かつての中心地であった九木浦に由来します。九木浦が歴史的に「九鬼」と表記されていたこと、九鬼氏の居城跡が存在したことなどから「九鬼村」と命名されました。「三栄村」という提案もありましたが、歴史的根拠に乏しかったため採用されませんでした。

2.2 近世

江戸時代、九鬼浦は九鬼水軍の拠点として栄えました。九鬼水軍の活動は、この地域の経済や社会に大きな影響を与えたと考えられます。

2.3 近現代

1889年、町村制の施行により、行野浦、九木浦、早田浦の区域をもって九鬼村が誕生しました。人口は1249人でした。その後、1909年には行野浦が尾鷲町に編入されるという大きな変化がありました。これは、尾鷲水産株式会社との漁場をめぐる紛争が原因でした。訴訟沙汰となったこの紛争は、和解で決着しますが、その条件として行野浦の分離が盛り込まれていました。

1954年、尾鷲町、須賀利村、北輪内村、南輪内村と合併して尾鷲市となり、九鬼村は廃止されました。

3. 行政

九鬼村は、多くの村長によって統治されてきました。記録に残る村長たちは、それぞれの時代に村の発展に尽力したと考えられます。（※歴代村長の一覧は、本文からは省略します。）

4. 教育

九鬼村には、九鬼村立九鬼小学校と九鬼村立九鬼中学校がありました。両校は、尾鷲市発足後、それぞれ2010年と2009年に閉校しています。

5. 名所・旧跡・観光スポット

九鬼村には、歴史と自然を感じさせる魅力的な場所が多く存在しました。

九木神社: 「九木神社樹叢」は国の天然記念物に指定されており、「尾鷲九鬼浦の正月行事」も国の選択無形民俗文化財に選定されています。
真巌寺: 曹洞宗の寺院で、九鬼氏の祖である九鬼隆信によって創建されたと伝えられています。鎌倉時代後期の作とされる本尊は、三重県指定文化財です。
にらくら祭り: 大晦日に開催される伝統的な祭礼です。

参考文献

「角川日本地名大辞典」編纂委員会 編『角川日本地名大辞典 24 三重県』角川書店、1983年
『日本歴史地名大系 24 三重県の地名』平凡社、1983年
三重県尾鷲市役所 編『尾鷲市史』上巻・下巻、三重県尾鷲市役所、1969年、1971年

これらの資料から、九鬼村の豊かな歴史と文化の一端を垣間見ることが出来ます。熊野灘の美しい自然に抱かれた、歴史ある九鬼村は、尾鷲市の歴史に重要な役割を果たした地域と言えるでしょう。

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