九鬼氏

九鬼氏の歴史と成り立ち

九鬼氏（くきし）は、日本の歴史に名を刻む武家・華族の一族であり、南北朝時代から安土桃山時代にかけて水軍として活躍しました。主に志摩国や伊勢国を中心に勢力を誇ったこの氏族は、江戸時代には摂津三田藩主家と丹波綾部藩主家の二つの家系が存続し、明治維新以降は華族の子爵家に列しました。

出自と南北朝時代

九鬼氏の出自については詳しいことがわからず、諸説存在します。『寛永諸家系図』によれば、九木浦に移住した熊野本宮大社の八庄司が地名から「九鬼」と名乗ったとされていますが、この説には異論も多いです。また、南北朝時代の藤原隆信が伊勢国佐倉に移住した後に、紀伊国九木浦に城を築き、九鬼隆信と名乗ったという説もあります。

九鬼氏は熊野での勢力を広げることができず、3代目隆房の次男、九鬼隆良が新天地を求め、波切村で川面家の養子となりました。彼は波切城の城主となり、隆良はその後子を迎え、波切九鬼氏の2代目、隆基となります。この段階で、最初の九鬼氏の血統は断絶したと考えられています。

戦国時代とその後

戦国時代の初期には、九鬼氏は伊勢北畠氏に仕えていました。しかし、北畠氏の力が弱まると、九鬼氏は織田信長の下に入りました。信長による北畠氏への侵攻の際、九鬼当主の嘉隆は織田氏と連携し、志摩国一帯を掌握しました。その後、九鬼水軍役は信長の海戦部隊として際立ち、伊勢長島の一向一揆の討伐や、石山本願寺攻略戦でも活躍しました。

さらに、九鬼氏は天正13年に従五位下・大隅守に任官され、九州征伐や小田原征伐に参加し、文禄・慶長の役では水軍の主力として顕著な功績を上げました。これにより、紀伊半島の制海権を獲得し、5万石の大名となる栄誉を得ました。

関ヶ原の戦いとその影響

関ヶ原の戦いの際、九鬼守隆は徳川家康の軍に参加しました。彼は急遽志摩に戻り、西軍方の堅城を攻めて東軍編成で最初の勝利を収めました。一方で、西軍に属していた嘉隆は義理の娘の父を助けるため、鳥羽城に籠城しました。結局、関ヶ原の戦いでは西軍が敗北し、嘉隆は逃亡しましたが、守隆は功績を評価され鳥羽城を安堵されました。

江戸時代の動乱

九鬼氏は、守隆が鳥羽城主として5万6000石を支配していた時代に、後継者を巡る争いが発生しました。守隆の一族は、最終的に江戸幕府によって領土を召し上げられ、今後の九鬼家は二つの藩に分かれました。

その後の九鬼家は、廃藩置県まで各々の領地を守り続けました。両藩ともに他家から養子を迎え入れ、幕末には倒幕に参加するなど活躍しました。

明治以降の変遷

明治時代に入り、両九鬼家は華族に列し、それぞれの藩知事として役割を果たし、廃藩置県まで務めました。家禄や金禄公債の規定により、三田九鬼家と綾部九鬼家はそれぞれ異なる金額を受け取り、士族の子爵に列されました。これを受けて、両家は江戸時代に築いた名声を引き続き保ちながら、明治の新しい社会に適応していくことになります。

分家・支族

守隆の四男、九鬼隆重は綾部藩内で独自の家系を形成し、明治時代には文部官僚として成功を収め、男爵に叙爵されました。哲学者の九鬼周造は彼の四男です。このように、九鬼氏はその後も多様な道を歩み続け、その歴史的な影響を色濃く残しました。

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