九鬼神流

九鬼神流について

九鬼神流（くきしんりゅう）は、江戸時代前期に大国鬼平重信によって創始された伝統的な武道の一つです。この流派は、特に棒術に焦点を当てており、通常の六尺棒に加えて、三尺棒を使用する半棒術の技術も伝承しています。九鬼神流は、当時の柔術流派である高木流との合流を経て発展しました。伝承によると、大国鬼平は夢の中で九匹の鬼と戦い、刃が折れた薙刀の柄によって鬼を打ち倒した際の体験が、九鬼神流の開祖となる契機となったとされています。

創始当初、九鬼神流は柔術も含んでいる流派でしたが、大国鬼平が高木流の高木源之進英重と技を競い合った結果、棒術に特化する決断をしました。この競争において、高木源之進が柔術においては優れていたのに対して、大国鬼平は棒術においてはその腕前を見せました。そのため、大国鬼平は九鬼神流の柔術技を捨てて、高木流の柔術や剣術と九鬼神流の棒術を融合させることになります。こうして、九鬼神流は高木流に合流し、大国鬼平はその後、高木源之進から高木流を継承し、第4代の流主となりました。

この九鬼神流の流派は、棒の両端にそれぞれ4個の鉄環を取り付けた特異な棒を使用し、中央には1個の鉄環を嵌めることで「九鬼」を表現していました。ただし、現在ではこの伝統を維持している系統は存在しません。大国鬼平と高木源之進の時代が異なるため、彼らの伝説的な出会いについては注意が必要です。実際、一部の流派は異なる伝承を持っているものの、それらの多くは大正時代以降に創作されたものであると言われています。

また、高木流から派生した系統も存在し、その中には今真流の第10代である上島三之助が伝承した流派があります。今真流は高木流と同様に赤穂藩に由来する柔術流派であり、上島は高木流において伝えられた九鬼神流の棒術も学びました。さらには、彼は本部朝基から空手を学び、その技術に九鬼神流の棒術を取り入れて、空真流空手道を創始しました。

このようにして、九鬼神流は後の武道にも多大な影響を与える存在となり、さまざまな流派の成り立ちに寄与してきました。武田流合気之術を創始した大庭一翁は、武田流に九鬼神流の棒術を取り入れて武田流杖術を形成し、また、天心古流拳法を発展させた上野貴も九鬼神流の技術を加えて天心古流杖術を興しました。こうした流派の融合は、九鬼神流の技術が未だに多様な形で生き続けていることを示しています。

今では、九鬼神流の伝統は少なくなってしまいましたが、その武学の精神や技術が後世に引き継がれていることは、今日の武道界においても重要な位置を占めています。

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