乱れ雲

映画『乱れ雲』

『乱れ雲』（みだれぐも）は、1967年に公開された日本映画で、成瀬巳喜男監督の最後の作品となります。この映画は、交通事故をきっかけに展開される人間関係と愛憎劇を描いています。制作と配給は東宝によって行われ、カラーフィルムで東宝スコープ形式で撮影されました。

あらすじ

物語の中心となるのは、由美子という女性です。彼女は通商産業省に勤務する夫・宏との幸せな日々を過ごしていました。しかし、そんな彼女の幸福は突然の悲劇によって打ち砕かれます。夫の宏が交通事故で命を落としてしまうのです。事故を引き起こしたのは商事会社に勤務する若者、三島史郎でした。史郎は裁判で無罪となりますが、その事実を知った由美子は、強い憎しみを抱いて彼を避け続けます。

宏の葬儀に現れた史郎を見かけた由美子は、彼を心から追い出そうとします。一方で、史郎も自分の行動の責任を感じ、青森に左遷されることになります。由美子は宏の両親によって籍を抜かれ、遺族年金を失い、経済的にも困窮し、実家のある十和田湖に帰らざるを得なくなります。

売られていた彼らの運命は、時間と共に変わっていきます。由美子と史郎は、互いに抱く感情が憎しみから次第に別のものへと変化していく様子が描かれます。この許されざる間柄の中で、彼らの心はどう動くのか、映画はその複雑な心理描写を丁寧に描写しています。

キャスト

- 三島史郎：加山雄三
- 江田由美子：司葉子
- 四戸勝子（由美子の義姉）：森光子（スペシャル出演）
- 檀淳子（武内常務の娘）：浜美枝
- 文子（由美子の姉）：草笛光子
- 林田勇三：加東大介
- 江田宏（由美子の夫）：土屋嘉男

など、豪華なキャスト陣がそろっています。

スタッフ

この作品の製作には、藤本真澄と金子正且が携わり、脚本は山田信夫が担当しました。撮影は逢沢譲が手掛け、美術面では中古智が活躍しました。音楽は武満徹が作曲し、映画全体の雰囲気を引き立てているのが印象的です。

同時上映と関連作品

この映画は、同時に『喜劇駅前百年』が上映されました。また、本作は1970年と1974年にテレビドラマとしてもアダプテーションされています。

1970年版では栗原小巻や中村敦夫らがキャストとして出演し、1974年版では北川めぐみや西口久美子が登場しました。

まとめ

『乱れ雲』は、切なくも深い人間ドラマを描いた作品であり、成瀬巳喜男監督の独特な視点が光っています。劇中の愛憎劇は、ただの恋愛物語ではなく、人生の苦悩や思いやりを考えさせられる要素を含んでいます。観客はこの映画を通じて、思いもよらない人間関係の複雑さや、愛することの苦しさについて考えさせられることでしょう。

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