乳酸性閾値

乳酸性閾値（LT）とは

乳酸性閾値（Lactate Threshold：LT）とは、運動強度を上げていった際に、血液中の乳酸濃度が急激に上昇し始める運動強度のことです。別名として、無酸素性作業閾値（Anaerobic Threshold：AT）やLactate Inflection Point（LIP）とも呼ばれます。

運動強度が上がると血液が酸性化しますが、これには主に2つの理由があります。高いATP加水分解レートによって筋肉中に水素イオンが放出され、それがモノカルボン酸輸送体によって筋肉から血液中に放出されること、そして炭酸水素塩が血液中に蓄積されることが挙げられます。この現象は、乳酸が代謝される速度よりも速く生成される場合に起こります。

運動強度がLT以下であれば、筋肉で生成された乳酸は蓄積されることなく除去されます。しかし、運動強度を上げていくと、血液中の乳酸濃度は無酸素性作業閾値（AT）または血中乳酸蓄積開始点（OBLA）に到達します。一般的に、血中乳酸蓄積開始点は血中乳酸濃度が4mmol/Lに達した点として定義されます。

LTの運動強度は、最大酸素摂取量を計測する際に行われる最大心拍数近くの運動強度よりも低いことが一般的です。ジャック・ダニエルズによれば、およそ50〜60分間のランニングに相当します。

乳酸性閾値の計測方法

正確に乳酸値を計測するには、運動強度を徐々に上げながら血液を採取する必要があります。また、呼気ガス分析を用いることで、非侵襲的にLTを推定することも可能です。この方法は換気性作業閾値（Ventilatory Threshold：VT）と呼ばれます。

乳酸性閾値は、本来乳酸値の蓄積が開始される点として定義されますが、実用的には乳酸値が4mmol/Lに到達する点をLTの値として利用する計測者もいます。なお、安静時の乳酸値は約1mmol/Lです。

有酸素性作業閾値（AeT）との違い

有酸素性作業閾値（Aerobic Threshold：AeT）とは、無酸素性エネルギー経路が動き始め、乳酸値が2mmol/Lに到達する運動強度のことを指します。AeTは、無酸素性作業閾値よりも心拍数が20〜40低く、最大心拍数の65%程度に相当します。

名前の通り、無酸素性エネルギー系はATPを生成する際に酸素を利用せず、主にグリコーゲンやグルコースをエネルギー源とします。乳酸は、筋肉を動かすのに必要なATPを生成する過程における嫌気性代謝の副産物として生成されます。

関連項目

最大酸素摂取量
有酸素運動
* 無酸素運動

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