乾正成

乾 正成とは

乾 正成（いぬい まさしげ）は、土佐藩士であり、著名な政治家・板垣退助の父として知られています。彼の家系は、土佐藩内で重要な役割を果たしており、正成自身もこの伝統を受け継ぎました。彼の生涯は、当時の日本の政治情勢や文化の発展に大きな影響を与えました。

来歴

正成は、初め信成（のぶしげ）と名乗り、後に藩主山内豊信の名を避けるために正成に改名しました。幼少期には魚之助との名で知られました。また、さまざまな名前で呼ばれることがあり、その中には榮六、左賀江、丈右衛門、左近兵衛などが含まれます。彼は土佐藩の馬廻格に属し、家禄は300石に達していました。

文化4年2月26日（1807年4月3日）、彼は惣領御目見を仰せ付けられ、文化7年11月3日（1810年11月29日）には、亡父・信武の後を継ぎました。当時の彼は、痩せ気味の退助とは対照的に、力士のような体格を持ち、約113kgにもなったと言われています。

彼の人生の中で特に注目される出来事は、文政2年頃の藩主の視察中に、うっかり馬に乗ったまま藩主の前を横切り、泥をかけてしまった事件です。この失態が噂となり、正成は改易を恐れるあまり乱心気味になったとも言われています。さらに、天保14年には妹の不品行に関連して、家禄が30石削減され、270石となりました。

文化的活動

正成は武士としてだけでなく、教養を重んじる人柄でも知られています。弘化3年（1846年）には、俳人・松尾芭蕉の句碑「蓬莱に聞はや伊勢の初便」を彼の邸内の庭に建立するなど、文芸にも関心を持っていました。今もこの句碑は文化遺産として残っています。

家族

正成の家族は、彼の人生に多大な影響を与えました。祖父は乾正聰、父は乾信武、母は谷村久之丞自熈の娘です。正成自身には多くの妻がいましたが、正妻は花井半助義抽の妹で、1800年代初頭に生まれました。さらに、複数の継妻を持ち、子供たちも多く、なかでも長男は後に伯爵となる板垣退助です。

最期と影響

乾正成は万延元年閏3月3日（1860年4月23日）に59歳で亡くなりました。彼は土佐国土佐郡の薊野赤坂に葬られました。彼の生涯は、彼自身のみならず、後の政治家や文化人にも影響を及ぼしました。特に、板垣退助は彼の息子として、その名を広め、自由民権運動に寄与したことが評価されています。

文学への影響

また、乾正成を主人公とした小説『近世名士譚』は伊藤仁太郎によって1908年に発表されており、彼の人生とその影響についての理解を深めるための重要な資料となっています。このように、乾正成の存在は、日本の近代史及び文化の発展において、決して無視できない役割を果たしています。

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