亀ヶ谷坂

亀ヶ谷坂（かめがやつさか）

亀ヶ谷坂は、神奈川県鎌倉市の山ノ内から扇ガ谷へと続く坂道で、鎌倉七口の中の一つとして知られています。この坂道は、別名「亀返坂」とも呼ばれ、その名は急坂であるために亀も途中で引き返してしまう、その様子を表現したものとされています。歴史的な視点から見ると、この道は江戸時代初期の文献にもその名が見られ、特に『玉舟和尚鎌倉記』では「亀ヶ井坂」として記載されています。

その後、1685年（貞享2年）に徳川光圀の命で編纂された『新編鎌倉志』以降は「亀ヶ谷坂」という表記が一般的になりました。しかし、鎌倉時代にこの場所に確実に道が存在した証拠は現在のところ不明です。広く知られている説の一つには、仁治元年（1240年）に北条泰時が道を開削したというものがありますが、実際の文献である『吾妻鏡』には「山内の道路を造らるべきの由その沙汰有り」とだけ記されています。このため、ここが亀ヶ谷坂であるのか、あるいは巨福呂坂であったのかは不確かです。

しかし、歴史学者の高柳光寿は、道の位置について現在の横須賀線の西側の谷を越えた場所であったのではとの説を提示しています。いずれにせよ、遅くとも鎌倉時代後期にはこの位置に道が存在していたという状況証拠が確認されています。さらに、亀ヶ谷坂は1969年（昭和44年）には国の史跡に指定され、歴史的および文化的に重要な場所として保護されています。

亀ヶ谷坂周辺には、江戸時代の雰囲気が色濃く残っており、坂を登ることで鎌倉の歴史に思いを馳せることができます。この地域の魅力は、脚下の石畳や周囲の自然景観、そして歴史的な背景が融合して魅力的な散策コースを形成しています。

また、関連する観光として、亀ヶ谷坂を含む鎌倉七口の一部を巡る事ができ、さらにこの地に関連する文化遺産資料を見学することも可能です。観光客や歴史愛好者にとって、亀ヶ谷坂はその名前の由来や歴史的背景を知ることができる貴重な場所です。この坂を歩いていると、昔の人々が辿った道のりを体感することができ、鎌倉の魅力を再認識することができるでしょう。

観光資源としての亀ヶ谷坂は、ただの坂道以上の存在感を持っています。歴史に触れつつ、自然の美しさを楽しむこの道は、一度は訪れる価値のある場所です。

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