亀井亨

亀井 亨（かめい とおる）は、1969年4月13日生まれの日本の映画監督です。福岡県出身。

映画監督への道のり

亀井亨は、福岡県立玄洋高等学校を卒業後、日本デザイナー学院に進学しますが、途中で学業を離れます。その後、福岡のRKB毎日放送で番組ディレクターとしてキャリアをスタートさせ、映像制作の基礎を培いました。番組制作の現場で経験を積んだ後、更なる表現の場を求めて上京し、映画業界へ足を踏み入れます。

映画の世界に入ってからは、すぐに監督として活躍したわけではなく、まずは助監督として多くの作品に携わりました。また、『GUN CRAZY』（2002年）では制作主任を、『紅姉妹』（2002年）では監督補と編集を務めるなど、様々な立場で映画制作に関わり、現場のノウハウを深く学びました。助監督としては『アンテナ』（2003年）などにも参加しています。この間には、オリジナルビデオ作品の制作も行っており、監督としての実践経験を積んでいきました。

監督デビューと国内外での評価

監督として正式にデビューしたのは、2005年に公開された映画『心中エレジー』です。この作品は、彼の監督としての才能を強く印象づけ、国内外の映画祭で高い評価を獲得しました。特に、ベルリン・アジアーパシフィック映画祭での最優秀作品賞をはじめ、シネマパラダイス映画祭、アトランタ・アンダーグラウンド映画祭でも最優秀作品賞を受賞するなど、複数の映画祭で主要な賞に輝きました。さらに、ハンブルク日本映画祭、ローム国際映画祭、コーク映画祭、インディー・リズボア映画祭といった各国の映画祭からも正式に招待され、『心中エレジー』は亀井監督のキャリアにおける重要な一歩となりました。

デビュー作での成功に続き、2006年には『楽園 -流されて-』がニューヨーク・ノーリタ映画祭、デルレイ・ビーチ映画祭、ティブロン国際映画祭、ベロイト国際映画祭、ハンブルク日本映画祭など、多くの海外映画祭に正式招待され、国際的な評価を確固たるものにしました。

多彩な作品群

亀井監督は、特定のジャンルに留まらず、幅広いテーマの作品を手掛けています。監督デビューと同じ2005年には、ホラー・サスペンス系の『霊視』や『憑依』を監督・脚本し、その手腕を発揮しました。2006年には妖怪をテーマにした『妖怪奇談』や、重松清原作の人間ドラマ『煙が目にしみる 〜重松清「愛妻日記」より〜』を発表しています。

特に彼のフィルモグラフィーで注目されるのは、動物を主要なモチーフとした一連のシリーズです。2009年の『幼獣マメシバ』を皮切りに、その続編である『マメシバ一郎』（2012年）、『マメシバ一郎 フーテンの芝二郎』（2013年）、『幼獣マメシバ 望郷篇』（2014年）といった「マメシバ」シリーズは多くのファンを獲得しました。また、『ねこタクシー』（2010年）、『犬飼さんちの犬』（2011年）、『くろねこルーシー』（2012年）など、猫や犬が登場する心温まる作品も手掛け、動物と人間との絆を描くことに長けていることを示しています。

一方で、人間の欲望や性の深淵に迫る作品も制作しています。『MiLK 滴る女』（2010年）や、『私の奴隷になりなさい』（2012年）など、官能的な世界観を表現する作品も彼の作品リストに含まれており、監督としての表現の幅広さを示しています。

近年では、『アルビノ』（2016年）、『無垢の祈り』（2016年）を監督・脚本。2021年には、相原かさねと共同で脚本も担当した『空蝉の森』を発表するなど、意欲的な創作活動を続けています。

テレビドラマとその他の活動

映画監督として主に知られていますが、テレビドラマの分野でも活動しています。『シリーズ恐怖夜話 episode 3 サイゴノヒツギ』（2003年）や『陰陽少女』（2004年）、『「超」怖い話』（2006年）といったホラー作品のほか、自身が監督した映画シリーズのテレビ版として、『ネコナデ』（2008年）、『幼獣マメシバ』（2009年）、『ねこタクシー』（2010年）、『犬飼さんちの犬』（2011年）、『くろねこルーシー』（2012年）なども手掛けています。

また、2008年には自身が監督したドラマ『ネコナデ』の小説版を永森裕二と共著で出版しており、活動は映像分野に留まりません。

亀井亨は、初期の助監督経験から培った確かな技術と、多岐にわたるジャンルへの挑戦意欲、そして国内外で評価される表現力を持つ監督です。人間ドラマからホラー、動物もの、官能まで、幅広いテーマで観客に語りかける彼の今後の活動が注目されます。

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