空蝉の森

映画『空蝉の森』：7年の時を経て公開された異色のサスペンス

2021年2月5日に劇場公開された日本映画『空蝉の森』（うつせみのもり）は、監督・脚本を亀井亨が務め、主演に酒井法子を迎えた作品です。特に主演の酒井法子にとっては、2012年に女優活動を再開して以来、初の主演映画として注目を集めました。しかし、本作が日の目を見るまでには、非常に長い歳月と様々な困難があったことで知られています。

製作から公開までの波乱の道のり

映画『空蝉の森』の撮影が行われたのは、公開から実に約8年も前の2013年でした。当初は翌2014年の公開を目指して製作が進められていましたが、製作を担っていた会社の倒産など、複数の不測の事態が発生。これにより、完成していたはずの作品が公開の見込みを失い、宙に浮いた状態となってしまいました。関係者の努力の末、この作品は実に7年もの長い眠りから覚め、2021年にようやく劇場公開されることになったのです。この製作・公開の経緯は、日本映画史上でも類を見ないほど異例なものと言えるでしょう。

物語を彩る登場人物たち

物語の中心となるのは、酒井法子が演じる加賀美結子です。彼女は3ヶ月前に突然失踪し、その後警察によって保護されたという過去を持っています。その夫である昭彦を斎藤歩が演じ、結子の周りには様々な人物が登場します。結子の夫・昭彦の精神カウンセラーである山井を西岡德馬が、夫の愛人である香織を長澤奈央が演じます。また、行方不明だった結子の消息を探るフリージャーナリストの青柳には金山一彦、結子の弟である正雄には池田努が配されました。さらに、物語に関わる重要な人物として、退職を目前に控えた警部、假屋を柄本明が演じ、複雑に絡み合う人間関係の中で失踪事件の真相に迫っていきます。角替和枝が演じる民宿の女将も、物語の鍵を握る存在として登場します。

公開における国内外の展望と現実

完成当時、製作側は本作の持つサスペンス要素や主演俳優の国際的な知名度から、中国をはじめとするアジア圏での公開や、海外の映画祭への出品を目指していました。しかし、世界的に拡大した新型コロナウイルス感染症の影響は、本作の公開戦略にも大きな影を落としました。結果として、これらの海外展開計画は実行が困難となり、頓挫せざるを得なかったとされています。

製作を支えたスタッフ陣

本作のメガホンをとったのは亀井亨監督で、脚本も監督自身が相原かさねと共に手掛けています。音楽は野中“まさ”雄一が担当し、主題歌には大黒摩季の「OK」が起用され、作品世界に彩りを加えています。撮影を中尾正人、照明を赤津淳一、録音を甲斐田哲也、美術を山崎輝がそれぞれ担当し、助監督を島田明美、制作担当を青木啓二が務めました。製作は山本風彬、吉井盛治、プロデューサーを太田裕輝、アソシエイト・プロデューサーを伊与木敏郎が担当しています。制作協力はNBI、配給・宣伝もNBIが行い、製作委員会は「空蝉の森」製作委員会が組織されました。

このように、一度は公開が危ぶまれた作品が、多くの困難を乗り越えて劇場に届けられた『空蝉の森』。その異例の製作経緯もまた、本作を語る上で欠かせない背景となっています。

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