亀田駅 (北海道)

亀田駅（かめだえき）は、明治時代に北海道函館市海岸町に位置していた、かつての国有鉄道函館本線の駅です。この駅は、現在につながる函館駅の歴史において、初代の駅としての役割を担いました。

開業から改称へ

北海道と小樽を結ぶ鉄道を敷設した北海道鉄道会社は、当初、現在の函館駅がある若松町に駅用地を取得していましたが、地元住民からの様々な事情による反対運動のため、やむを得ず一時的に海岸町へ駅を設置することになりました。これが、1902年12月10日に開業した初代の「函館駅」です。しかし、この駅は函館の中心市街地や、当時青函連絡船の艀（はしけ）が発着していた東浜桟橋から離れており、利用者にとっては不便な場所にありました。

その後、鉄道会社が若松町の駅用地を確保し、状況が好転したことで、1904年7月1日、現在の函館駅の場所にあたる若松町に二代目の「函館駅」が開設されました。これに伴い、海岸町の初代函館駅は「亀田駅」と改称され、新しい函館駅と桔梗駅の間に位置する中間駅となりました。

短命に終わった駅

亀田駅と改称された後も、その立地の不便さは解消されませんでした。当時の亀田村（現在の函館市の一部）の中心部からも、函館市街からも距離があったため、利用者にとっての利便性は低いままでした。さらに、新しい函館駅からはわずか1.3キロメートルしか離れておらず、二つの駅が近すぎることも、亀田駅の必要性を低下させる要因となりました。

1907年7月1日には北海道鉄道が国有化され、亀田駅も国有鉄道の駅となります。しかし、翌1908年4月12日、駅舎などが火災により焼失してしまいます。これを機に、同年5月1日から旅客および貨物の営業が休止されました。営業休止期間は3年にも及び、結局、駅舎が再建されることなく、1911年8月29日をもって正式に廃止されました。皮肉なことに、廃止されたのは、現在の五稜郭駅が開業するわずか2日前のことでした。

駅構造とその後

初代函館駅として機能していた頃は、駅舎側に面した単式ホーム1面と線路1本が乗降用として使われ、他に副本線や荷物積卸場、複数の側線を持つ終端駅でした。ただし、転車台は設置されていませんでした。

亀田駅として中間駅になった後は、駅裏側の側線が副本線に合流するように変更され、新たに転車台を備えた機回し線が設けられました。一方で、荷物積卸場などは撤去されています。また、1907年には北海道人造肥料会社（後の日産化学工業、現・北海道サンアグロ）への専用線が当駅所轄として敷設されましたが、後に函館駅や五稜郭駅の所轄に変更されています。

亀田駅の廃止後、線路が海岸沿いの現在のルートに移設されるまでの間、旧駅の敷地の一部は函館工場（鉄道工場）の用地として利用されました。

現在の駅跡

時代の経過とともに線路の付け替えや周辺の宅地化が進んだため、亀田駅の正確な駅舎位置を特定するのは困難になっていますが、現在の北海道警察函館西署の付近が旧駅の所在地とされています。また、近隣のイオン万代店の西署側出口付近には、「工」のマークが入った敷地境界を示す石が残されており、かつて鉄道用地であった名残を見ることができます。

五稜郭駅から旧亀田駅までの鉄道旧線跡は、現在も道路や地区の境界線としてその名残を多く留めています。

記念碑の変遷

かつての駅の歴史を伝えるものとして、「旧函館駅所在地」および「函館本線0マイル地点」を示す記念碑が存在します。この記念碑は、初代函館駅の開業から60年となる1962年12月10日に、旧駅舎跡地近くにあった国鉄官舎街の一角に設置されました。設置当初は、北海道鉄道時代に使用されていたレールが記念碑を囲むように配されていました。

1967年には準鉄道記念物に指定されましたが、周辺の宅地化など環境の変化により、1990年に旧函館桟橋を再活用した函館シーポートプラザ（現在の函館駅近く）へ移設されました。しかし、本来の所在地とは異なる場所への移設であったため、2010年10月に準鉄道記念物の指定が解除されました。その後、旧函館シーポートプラザの解体に伴い、2014年10月に現在の函館駅西口広場へ再移設され、現在に至ります。短期間で廃止された亀田駅は、その歴史を伝える記念碑が各地を転々としたことでも知られています。

短い期間ではありましたが、亀田駅は函館の鉄道史において、街の発展と鉄道網整備の過程を示す貴重な存在として記憶されています。

隣の駅（廃止当時）
函館駅 - 亀田駅 - 桔梗駅
※現在の五稜郭駅は、亀田駅の廃止後に開業しています。

もう一度検索