事実婚

事実婚の概念と日本における意味

事実婚（じじつこん）は、法律上の婚姻届を提出せずに婚姻関係を営むことを指します。これは、一般的に「無式婚」とも称され、要式婚（形式婚）と対比される概念です。日本ではこの言葉は通常、法的な婚姻（届出婚）に対する形態として使われています。

事実婚と内縁の違い

事実婚は、広義には「内縁」と同義の言葉としても使われますが、当事者間の意図的な選択によって婚姻届無く共同で生活する状態を特に指します。社会的要因などで合法的な婚姻ができない場合を含む内縁とは異なり、事実婚は選択的なように強調され、「選択的事実婚」や「自発的内縁」と呼ばれることもあります。

日本における事実婚の現状

日本の法律では、婚姻成立には社会的承認や儀式が一般的に必要であり、このため事実婚を法律上定義することは極めて困難です。2024年現在で、法律的な同性結婚が認められていない日本において、同性カップルが事実婚の形になることがしばしばあります。最高裁は2021年に同性カップル間でも内縁関係が認められるとの判断を下しました。

パートナーシップ制度

千葉市や横浜市など一部の自治体では、同性や異性にかかわらず人生のパートナーとして宣誓し、その認定を受けられる制度があります。このような制度が拡大するにつれて、事実婚カップルが享受できる法的保護も徐々に進展しています。

事実婚を選択する理由

多くの人が事実婚を選ぶ背景には、夫婦別姓を保持するためや家族制度への抵抗があります。特に最近の調査によると、女性は夫婦別姓を通すため、男性は戸籍制度への反発を主な理由として挙げています。事実婚を選択することにより、個々のライフスタイルや価値観を尊重する形で共同生活を営む傾向が強くなっています。

住民票や自治体の取り扱い

事実婚カップルは、法律婚とは異なり戸籍に変化はありません。住民票では「同居人」または「未届の妻（夫）」という形で記載され、そのための手続きが自治体によって異なることもあります。住民票の続柄を未届の妻や夫として記入すれば、世帯主と同じ扱いを得て様々な手当を受けられます。さらに、一部の自治体ではパートナーシップ証明書を発行し、法的な効力をもたらすこともあります。

社会保険と法律的問題

事実婚カップルも、年金や健康保険において法律婚と同様の取り扱いが受けられます。しかし、親権や相続権、生命保険の受取人に関しては多くの制約が存在します。特に、子供が生まれた場合、婚外子として扱われることが大きな問題です。さらに、法律的拘束がないため、財産分与や慰謝料などが認められない場合が多いです。

日常生活の課題

家族としての関係を証明することが難しく、医療行為や家族の保証について不便が生じることがあります。たとえば、病院での手続きにおいて、配偶者としての権利を主張しにくいという状況があるほか、国際的な移動の際にも制限が発生します。

経済的な影響

法律婚に比べて相続や税金の負担が大きくなる傾向があります。事実婚では、確定申告の際に配偶者控除が受けられず、医療費や不妊治療に対する助成も受けにくくなります。企業の家族手当や福利厚生も一部のケースを除いて対象外とされることが多く、社会的に受け入れられる選択肢としての限界があります。

今後の課題と議論

事実婚の法的保護に関する問題は多岐にわたります。選択的夫婦別姓制度の導入や、事実婚を保護するための法制度の整備が求められる中で、婚姻届を出さないことを選択したカップルにも適切な法律的保護が与えられるべきとの議論が進行中です。これにより、より多様な家族形態が認められる社会の実現が期待されています。

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