事後承認法

事後承認法について

事後承認法（じごしょうにんほう、ドイツ語: Indemnitätsgesetz）は、1866年9月26日にプロイセン王国で公布された重要な法律です。この法律は、軍制改革を巡る国王、政府と議会との間の対立が引き金となり、1862年から続いていた無予算統治に事後的な承認を与えるものです。事後承認法が成立したことにより、国王・政府と議会との和解が図られました。

背景

プロイセンとオーストリアは、それぞれ自身の視点からドイツ統一を進めようとしていた時期、プロイセン国王ヴィルヘルム1世と陸相アルブレヒト・フォン・ローンは軍事力の強化が不可欠であると考えていました。一方で、プロイセン衆議院は予算の承認権を持ち、自由主義派の議員も軍備増強には賛成していましたが、ラントヴェーアへの配慮から義務兵役の延長には反対していました。このような状況の中で、軍制改革を盛り込んだ予算案は衆議院で否決され、ヴィルヘルム1世は退位を考えるほどの危機に陥っていました。

オットー・フォン・ビスマルクは、国王の権威を守ることを強く主張し、衆議院に反対してでも軍制改革を行う意志を示しました。ビスマルクは憲法には予算案が合意に至らなかった場合のルールが明記されていないため、無予算統治が可能であるという「空隙説」を提唱。これにより、1862年から1865年の間、実質的に議会を無視して政府を運営しました。

制定までの経緯

1866年7月3日のケーニヒグレーツの戦いの後、プロイセンで行われた総選挙では保守派勢力が大勝しました。勝利したことでビスマルクは衆議院との対立姿勢を和らげ、免責の確保を目指す行動を起こすことになります。彼は1862年から1865年までの予算の合法性を確認しつつ、予算における主権が衆議院にあることを認めることで、自由主義者との和解を図りました。

ビスマルクは憲法を一方的に解釈したことを認めた一方で、例外的な状況下であれば無予算統治が避けられないとし、免責を勝ち取ります。この和解の試みは功を奏し、事後承認法案は1866年9月3日に衆議院で可決され、9月8日には貴族院でも全会一致で承認されました。そして1866年9月14日に法律として公布され、施行されました。この法律により、プロイセンの軍制改革を巡る憲法闘争は終結したのです。

余波

事後承認法案の成立を受け、ドイツ進歩党は分裂しました。党内の左派は法律に反対した一方、右派はビスマルクの軍制改革とオーストリアを排除した小ドイツ主義に賛成し、国民自由党を結成。彼らは、ビスマルクを支持することが議会制民主主義に基づく国民国家の形成を早めると期待していました。事後承認法は、プロイセンと議会の関係に大きな影響を与え、ドイツ統一に向けた道を開いたのです。これにより、プロイセンは自身の軍事力を強化し、さらなる国際的な地位を確立する基盤を築きました。

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