事情変更の原則

事情変更の原則

事情変更の原則とは、契約成立の前提となった事情が、その後の社会・経済情勢の変動などによって著しく変化し、当初の契約内容どおりに履行させることが当事者間の公平を著しく損なう場合に、契約の解除や変更を認める法的な考え方です。

理論

この原則の起源は、第一次世界大戦後のドイツにおけるインフレーションに端を発します。当時、契約の価格改定を求める訴訟が多発し、その根拠として「行為基礎の変更」という法理が用いられました。同様の考え方は、英米法にも見られますが、フランスではより限定的に解釈されています。

日本においては、岩田新教授が1924年に発表した論文で初めて紹介しました。事情変更の原則を直接定めた法律はありませんが、民法や借地借家法などの規定にその考え方が反映されています。判例や学説では、信義誠実の原則を根拠として、一定の要件を満たす場合に事情変更の原則の適用を認めています。ただし、最高裁判所は、事情変更の原則の適用には慎重な姿勢を示しており、実際に契約解除や変更を認めた例はごくわずかです。

要件

事情変更の原則が適用されるためには、以下の要件を満たす必要があります。

1. 契約締結後に、契約の基礎となった客観的な事情に著しい変更が生じたこと。
2. その事情の変更が、当事者にとって予見不可能であったこと。
3. 事情の変更が、当事者の責めに帰すべき事由によって生じたものではないこと。
4. 契約どおりの履行を強制することが、著しく公平に反し、信義則に反すること。

効果

事情変更の原則が適用された場合、契約の解除または変更が認められます。具体的には、契約内容の変更、損害賠償、契約の解除などが考えられます。

実務での対応

建設工事においては、契約締結後に予期せぬ事態が発生することがあります。例えば、地盤の状態が契約時の想定と異なっていたり、埋蔵文化財が発見されたりするケースです。このような場合、建設工事請負契約約款に基づいて、条件変更や設計変更の手続きを行うことがあります。

条件変更

建設工事請負契約約款第19条には、条件変更に関する規定があります。設計図書と実際の工事現場の状況が一致しない場合や、設計図書に誤りがある場合などが該当します。条件変更が行われる場合、工期や請負代金額の変更、損害賠償などについても協議されます。

設計変更

国土交通省港湾局では、港湾工事における契約変更事務ガイドラインを設けています。このガイドラインでは、設計変更とは、工事の施工にあたり、設計図書の変更を伴うものを指します。設計変更に伴い、工期や請負代金額の変更が必要となる場合は、契約変更の手続きが行われます。

脚注

関連項目

* 信義誠実の原則

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