二十世紀の神話

『二十世紀の神話』の概要

アルフレート・ローゼンベルクによる著書『二十世紀の神話』は、1930年に発表され、ナチスの思想を深く掘り下げた作品です。著者は国家社会主義ドイツ労働者党の指導者の一人であり、彼の思想がどのように形成されていったのか、またその背景にある文化的、歴史的な要素について触れていきます。

出版の経緯

ローゼンベルクは1917年に本書のアイデアを思いつき、1925年までにはほぼ完成させていましたが、様々な事情により1930年まで出版が延びました。発行時、彼はナチ党の文化政策の責任者であり、芸術や思想に対する重要な役割を果たしていました。この本は党員を対象にしたものではなく、まだ世界観を持たない人々に向けた内容であるとされています。

構成の内容

本書は三部から構成されています。第一部では「価値の葛藤」と題し、学問を「ゲルマン的」、「ローマ的」、「ユダヤ的」に分類しています。特にローマ的学問が教会の影響を受け、ユダヤ的価値が金融に執着することに対し、ゲルマン的学問を最も優れたものと位置付けています。

第二部は「ゲルマン芸術の本質」を探求しており、具体的にはマイスター・エックハルトに関して多くのページを費やしています。この部分は後に独立した出版物としても知られています。さらに、カトリック美術や建築への批判が多く並べられ、ゲルマン美術の優位性が強調されていますが、必ずしも整合性があるとは言えません。オスヴァルト・シュペングラーの影響も窺えつつ、彼の素朴な生の形態学への反論も展開されています。

最後の第三部ではアーリア人種の優越性が論じられ、道徳とエネルギーにおいて他の人種を導く運命にあると主張されています。アーリア族の堕落についても触れ、セム系人種の影響が染み込んでいるとの警告がされています。「人種保護」などは新時代の重要な要素とされています。この際の「神話」という言葉は、「道徳・文化・信仰を組織化するもの」として用いられ、ニーチェの影響が色濃く見て取れます。

反響と評価

本書は、発行からわずか6年で50万部が売れ、その後も100万部以上を記録しました。ヒトラーはこの本を公然と支持せず、その内容に否定的なコメントを残していますが、評価は分かれています。ドイツ国内外での反応は限られ、ローマ教皇庁はキリスト教の理念を冒涜しているとして禁書にしました。また、他の思想家たちからは極端なショーヴィニズムとして嫌悪され、まともに評価されることはありませんでした。

日本においては1938年に翻訳出版されましたが、やはりその内容の革新性や思想の影響力は薄く、主に批判的な視線が注がれました。ローゼンベルクの思想は、時代を越えてもなお、様々な見方と解釈を呼び起こすものであると言えるでしょう。

もう一度検索