二十二銀行

二十二銀行とは

二十二銀行（にじゅうにぎんこう）は、日本の明治時代から大正時代にかけて、現在の岡山県岡山市を中心に活動していた有力な地方銀行でした。後にみずほ銀行の前身の一つとなる富士銀行へと連なる安田財閥系銀行の一員となる歴史を持っています。設立当初は国立銀行として歩み始め、私立銀行への改組を経て、岡山県だけでなく、近隣の香川県や広島県にも支店を展開するなど、一時的には日本の地方銀行の中でも特に大きな規模を誇る存在へと成長しました。しかし、日清戦争後に発生した経済恐慌によって経営状況が悪化し、最終的には安田財閥の支援を受けてその系列に入り、保善銀行（後の安田銀行）に吸収合併される形でその歴史に幕を閉じました。

設立とその背景

この銀行は、1877年（明治10年）11月15日に、旧岡山藩の武士であった新庄厚信や花房端連らによって設立されました。開業の目的は、明治維新に伴って士族に支給された金禄公債証書を元手にした資産運用（利殖）にありました。当初は岡山県下備前国岡山区船着町（現在の岡山市内）に本店を構えました。設立の経緯から、開業当初は旧岡山藩主である池田家関係者が役員や株主の大部分を占めていましたが、明治10年代後半に日本経済を襲った深刻なデフレ不況の影響を受け、池田家は銀行経営から完全に撤退することになります。

経営基盤の変遷と地域経済への貢献

池田家の撤退後、銀行の顧客層は変化し、預金者の中心は下級士族や商人、農業者（地主）、企業など、より広範な層へと移行していきました。貸付先もデフレ不況以降は多様化し、当初の金禄公債利殖から、紡績業、海運業、米穀取引、各種物産、土地関連など、地域産業の幅広い分野へと広がりました。これらの取引は、主に人的なつながりを通じて築かれていきました。特に、岡山紡績や玉島紡績といった地元の主要企業の好業績に加え、山陽鉄道の開通がもたらした紡績、製糸、鉱山業などの勃興、そして日清戦争とその後の好景気といった地域経済の拡大が、二十二銀行の規模を飛躍的に拡大させる原動力となりました。同行はこれらの産業発展や、地域における地主制の形成に対しても、資金供給を通じて多大な影響を与えました。

国立銀行から私立銀行へ、そして成長のピーク

国立銀行としての営業期間が満期を迎えようとしていた頃、第二十二国立銀行は150万円という大きな資本金を有するまでに成長しており、岡山の多くの地元企業から普通民間銀行として営業を継続することへの強い要望が寄せられていました。また、1895年（明治28年）には、将来的な国立銀行の解散を見越した同行幹部によって、私立銀行としての営業を引き継ぐための受け皿となる銀行として、（旧）中国銀行が設立されました。そして、1897年（明治30年）1月1日、「国立銀行営業満期前特別処分法」に基づき、国立銀行としての幕を閉じ、株式会社二十二銀行として私立銀行に改組・改称して営業を継続しました。この改組により、（旧）中国銀行の設立目的が失われたため、同年3月10日には二十二銀行に合併されました。これにより、二十二銀行は地方銀行として全国でも有数の規模を誇る存在となりました。

恐慌と安田財閥系列への移行

しかし、その成長も長くは続きませんでした。1901年（明治34年）に発生した恐慌によって、二十二銀行は大きな経営的な打撃を受けました。同年7月には、経営再建のため、有力な金融グループであった安田財閥からの支援を受け入れ、安田銀行の系列銀行となりました。その後も事業拡大を図り、1921年（大正10年）4月30日には牛窓銀行を、同年9月30日には井原銀行をそれぞれ合併しました。合併直前の時期には、岡山県を中心に、香川県と広島県を含めて合計21店舗を展開する広範なネットワークを持つに至りました。

保善銀行への合併と終焉

二十二銀行の歴史は、1923年（大正12年）11月1日に幕を閉じます。この日、安田財閥が進めていた系列銀行の再編・大合同に参加する形で、株式会社保善銀行（後の安田銀行）に合併されました。これにより、岡山県における独立した地方銀行としての二十二銀行はその存在を消滅させました。

合併直前には、岡山県内に14店舗、香川県に4店舗、広島県に3店舗の計21店舗を有していましたが、その後の再編や統合を経て、現在みずほ銀行の店舗として残っているのは、旧本店である岡山支店をはじめ、倉敷支店、高松支店、福山支店、広島支店の5店舗のみとなっています。かつて地域経済を支え、全国有数の規模を誇った二十二銀行の物語は、日本の近代金融史の一頁として記憶されています。

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