二十四時間の情事

『二十四時間の情事』(ヒロシマ・モナムール) 作品解説

『二十四時間の情事』（原題：Hiroshima, mon amour）は、1959年に公開されたフランスと日本の合作映画であり、アラン・レネ監督の記念すべき長編デビュー作です。脚本はマルグリット・デュラスが手掛け、エマニュエル・リヴァと岡田英次が主演を務めました。この作品は、第二次世界大戦の傷跡が色濃く残る広島を舞台に、戦争によって心に深い傷を負った男女の出会いと、その情愛を通して、戦争の悲劇と人間の内面を描いています。

あらすじ

反戦映画の撮影のため広島を訪れたフランス人女優は、そこで出会った日本人男性と恋に落ちます。二人は、互いに過去の戦争体験によって深く傷ついていました。日本人男性は原爆で家族を失い、フランス人女性はナチス占領下の故郷でドイツ兵と恋に落ちた過去を持っていました。二人の情事の合間に、広島の原爆被害の映像や、それぞれの過去の記憶が挿入され、戦争がもたらす悲劇と、そこから逃れられない人々の心の葛藤が描かれます。

作品の特徴

• - 広島を舞台とした作品: 映画は、1958年当時の広島で全編ロケーション撮影されました。平和公園や原爆ドームなど、広島の象徴的な場所が多数登場します。また、多くの広島市民が撮影に参加し、当時の広島の姿がリアルに映し出されています。
• - 過去と現在の交錯: 映画は、広島の惨状を映し出す映像と、男女の個人的な記憶や感情を交錯させることで、戦争の悲劇が個人の内面に与える影響を深く描いています。
• - ドキュメンタリー的手法: 当初、監督は広島を舞台にしたドキュメンタリーを制作する予定でした。その影響からか、劇中には、ニュース映像や過去のドキュメンタリー作品の一部が引用されており、現実とフィクションが入り混じったような独特の表現が用いられています。
• - 文学的なセリフ: マルグリット・デュラスが手掛けた脚本は、文学的なセリフが多く、登場人物の内面を深く掘り下げています。特に、ヒロインの過去の恋愛に関する回想シーンは、感情的な描写が印象的です。

キャスト

• - 女：エマニュエル・リヴァ
• - 男：岡田英次
• - 母親：ステラ・ダサス
• - 父親：ピエール・バルボー
• - ドイツ兵：ベルナール・フレッソン

製作

アラン・レネ監督は、外部から来たフランス人が原爆をどこまで理解できるのかという疑問から、映画製作を始めました。広島でのドキュメンタリー制作を断念した後、個人の内面にある戦争を背景に、人間が自己を探求する過程を描くことを決意しました。映画には、広島市民が多く参加しており、当時の街の様子や人々の姿が記録されています。映画の製作は、フランスのアルゴス・フィルム、日本の大映、パテ・オーヴァーシーズの合作で行われました。

公開

1959年のカンヌ国際映画祭で上映され、その後フランス、日本で公開されました。カンヌでは、原爆の映像が含まれていることからコンペティション部門への参加は見送られました。日本での公開当初は、難解な映画として受け止められましたが、後に批評家から高い評価を受け、再評価されました。

受賞・評価

• - 1959年 カンヌ国際映画祭 国際映画批評家連盟賞
• - 1960年 ニューヨーク映画批評家協会賞 外国語映画賞

ジョルジュ・サドゥールは「時代を画する作品」と絶賛し、映画史においてもヌーヴェルヴァーグの重要な作品として評価されています。日本では、キネマ旬報ベストテンや、その他の映画雑誌のランキングにも選出されています。

写真展

2008年には、エマニュエル・リヴァが撮影中に個人的に記録していた広島の写真を元に、写真展が開催されました。リヴァ自身も50年ぶりに来日し、広島市民と交流しました。写真集「HIROSHIMA 1958」も出版され、当時の広島の姿を今に伝えています。

作品が与えた影響

『二十四時間の情事』は、その芸術性、テーマ性において、後世の映画に大きな影響を与えました。広島を舞台にした映画としてだけでなく、戦争の悲劇と人間の心の葛藤を描いた作品として、今もなお多くの人々を魅了し続けています。

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