二十才の微熱

1993年、橋口亮輔監督・脚本による青春映画『二十才の微熱』は、第6回PFFスカラシップ作品として制作されました。英語タイトルは『Touch of a fever』または『The Slight Fever of a Twenty Year Old』で知られています。

物語の中心となるのは、東京の大学に通う島森樹です。樹は夜間、アルバイトとしてバーで働いています。そこで出会うのが、樹に好意を抱く高校生の宮島信一郎です。

樹を取り巻く人間関係は複雑で、多様な人物が登場します。彼自身の内に秘めた感情や葛藤、そして周囲の人々との微妙な距離感などが丁寧に描かれています。

アルバイト先のバーは、夜の街の喧騒とは異なる静けさと独特の雰囲気を醸し出しています。そこでは様々な人間模様が交差しており、樹や信の青春時代特有の悩みや葛藤を反映する舞台となっています。

信は樹に好意を抱いていますが、その想いは素直に表現されるわけではありません。言葉にならない想いや、微妙な間合い、そして二人の距離感など、繊細な感情表現が作品全体に漂っています。

樹の日常は、大学生活とアルバイト、そして友人たちとの交流で構成されています。しかし、彼の心の中には、未来への漠然とした不安や、自分自身の存在意義に対する疑問が潜んでいます。

出演者は、袴田吉彦が主人公の樹を、遠藤雅が信一郎を演じています。その他、片岡礼子、草野康太、山田純世、原田文明、川口洋一、石田太郎、入江若葉、佐藤恒治、大河内浩、そして監督自身の橋口亮輔も客役として出演しています。

スタッフには、助監督として篠原哲雄、谷口正章、西岡容子、製作者として林和男、丸山寿敏、製作総指揮に矢内廣、プロデューサーに石垣朗、企画に熊倉一郎、大柳英樹、南條昭夫、撮影に戸澤潤一、録音に臼井勝、録音助手として田中要次、照明に桜井雅章といった面々が名を連ねています。

1994年には、橋口亮輔監督自身によるノベライズ版『二十才の微熱』（扶桑社文庫）も刊行されています。この小説版では、映画では描かれなかった部分や、登場人物たちの心情がより深く掘り下げられているかもしれません。

『二十才の微熱』は、青春時代の淡い恋心や、若者たちの葛藤、そして夜の街の静謐な空気感など、様々な要素が複雑に絡み合った作品です。単なる青春映画の枠を超え、人間の心の機微を繊細に表現した、忘れ難い作品と言えるでしょう。 映画の持つ独特の雰囲気や、登場人物たちの心情をじっくりと味わいたい作品です。

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