二又トンネル爆発事故

1945年 11月12日、福岡県田川郡添田村（現在の添田町）で、二又トンネル爆発事故が発生しました。この事故は、第二次世界大戦終結直後に、連合国軍が旧日本軍の火薬を処理する際の大規模な爆発が原因で起こりました。

事故の概要

事故が起こった二又トンネルは、日田彦山線の未開通区間に存在し、全長約100メートルでした。戦時中、このトンネルは旧日本軍の火薬庫として利用されていました。終戦後、連合国軍はトンネル内に保管されていた大量の火薬を焼却処分しようとしました。しかし、点火から約2時間後、トンネル内で大爆発が発生し、周囲の山林や民家を吹き飛ばす大惨事となりました。

この爆発により、147人が死亡、149人が負傷、そして135戸の家屋が全壊するという甚大な被害が発生しました。

事故発生までの経緯

火薬の保管

1944年、陸軍小倉兵器補給廠山田填薬所の火薬倉庫が空襲で焼失したため、二又トンネルと近隣の吉木トンネルが代替の火薬庫として選ばれました。これらのトンネルには、1944年7月から1945年2月にかけて大量の火薬が運び込まれました。

終戦後の状況

1945年 8月15日、日本は第二次世界大戦で降伏。連合国軍は、旧日本軍が保管していた火薬の処分を決定しました。11月8日、旧日本軍から連合軍へ火薬の管理が引き継がれました。この際、旧日本軍の担当者は現地での確認を申し出ましたが、連合軍はこれを拒否しました。

焼却処分

事故当日、連合軍の少尉は、トンネル内の火薬を焼却処分するために、添田警察署に警察官と作業員を派遣するよう指示しました。まず、吉木トンネルで試験的に火薬を燃やし、安全であることを確認した後、二又トンネルでの焼却作業を開始しました。

15時ごろ、連合軍兵士が二又トンネルの入口から導火線に点火し、その後、その場を離れました。しかし、点火から約2時間後の17時20分ごろ、トンネル内で大爆発が発生しました。

事故発生時の状況

爆発は非常に激しく、トンネルがあった山全体が吹き飛び、その衝撃で周囲の民家も破壊されました。また、多数の死傷者が発生し、中には爆風で吹き飛ばされたり、瓦礫の下敷きになったりした人もいました。

爆発の直前、彦山駅に到着予定だった列車は、沿線火災の影響で遅延しており、難を逃れました。しかし、その列車に乗る予定だった乗客が駅前で爆発に巻き込まれ、犠牲になりました。

事故後の対応

救助活動

事故発生後、地元住民や警察、消防団などが救助活動を行いましたが、終戦直後の物資不足も重なり、活動は難航しました。重傷者は病院に搬送され治療を受けましたが、多くの人々が命を落としました。

補償問題

当初、連合国軍からの補償は一切ありませんでした。そのため、遺族は国に対して補償を求め、裁判を起こしました。1審では訴えが棄却されましたが、2審で勝訴し、最終的に国から補償金が支払われることになりました。また、裁判とは別に、政府からの見舞金も支給されました。しかし、支給された金額は被害総額の3%にも満たないものでした。

その後

二又トンネルは爆発で消滅し、跡地は切り通しとなりました。現在、この場所はBRTひこぼしラインのバス専用道となっており、当時の面影はありません。事故現場近くの昭光寺には慰霊碑が建立されています。

事故の原因

裁判所の判決では、二又トンネル内の火薬の格納率が高かったことが、大爆発につながったと結論づけられました。吉木トンネルに比べて二又トンネルは格納率が高く、燃焼が進むにつれて爆発が拡大したと考えられています。

教訓

二又トンネル爆発事故は、戦後間もない混乱期における、ずさんな火薬の取り扱いがもたらした悲劇です。この事故は、軍事施設の管理や危険物の取り扱いについて、厳格なルールと安全対策を講じることの重要性を教えています。

この悲惨な出来事を二度と繰り返さないために、私たちは歴史から教訓を学び、安全な社会づくりに努める必要があります。

参考文献

「添田町史」（上巻）、1992年、673頁 - 693頁
「福岡県警察史」（昭和前編）、1980年、676 - 680頁
「激動二十年・福岡県の戦後史」、毎日新聞西部本社、葦書房、1994年復刻版（初版は1965年）、ISBN 4751205870、80頁 - 82頁
「九州・鉄道歴史探訪」弓削信夫、ライオンズマガジン社、1980年、204 - 210頁
「福岡県百科事典」（下巻）、西日本新聞社、1982年、742頁
「続事故の鉄道史」佐々木冨秦・網谷りょういち、日本経済評論社、1995年、99頁 - 116頁
「福岡鉄道風土記」弓削信夫、葦書房、1999年、ISBN 4751207334、170頁 - 173頁
「西日本新聞」1945年11月14日 - 16日

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