葦書房

葦書房についての詳細

葦書房（あししょぼう）は、福岡県福岡市南区長丘に本社を構える日本の出版社である。1970年に久本三多により設立されて以来、地域に根ざした出版活動を展開してきた。特に絵本や記録文献など、多様なジャンルで著名な出版物を世に送り出してきた。葦書房は西日本新聞社出版局や石風社、海鳥社と並び、福岡市に拠点を置く出版社として評価されている。

代表的な作品とその影響

同社が発行した代表的な書籍には、1973年に増刷を重ねた『筑豊炭坑絵巻』がある。この作品は山本作兵衛の制作によるもので、後にUNESCOの記憶遺産にも認定された。葦書房は社会問題にフォーカスを当てた出版物も多く手掛けており、『水俣病事件資料集』は水俣病研究会によって編纂され、熊日出版文化賞特別賞を受賞している。また、渡辺京二著の『逝きし世の面影』も和辻哲郎文化賞を得ている。

葦書房では、地域に住む作家や研究者の作品が多く出版されており、特に熊本在住の石牟礼道子や上村希美雄などの著者による書籍も多く販売された。雑誌『水俣病研究』の刊行を通じ、地域社会への貢献も果たしてきた。これらの出版物は、社会的な問題意識を高め、人々に重要なメッセージを伝えている。

経営の変遷

1994年、創業者の久本三多が死去した後、経営権はその元妻である久本福子が引き継いだ。社長には当時毎日新聞の編集委員だった三原浩良が就任し、経営の持続を図った。三原は葦書房を8年間にわたって黒字運営に導いたものの、経営方針の不一致と経営状況の悪化により2002年に福子によって解任された。これに反発した社員は退社し、後に弦書房や石風社を設立することとなった。 その後、葦書房は時代の流れと共に後継出版社への移行が進み、一部のまだ出版されていた書籍は他の出版社に譲渡された。

解散と個人事業への移行

2012年、葦書房有限会社は事業を福子に譲渡し、会社としては解散となった。三原によれば、元社員に対する退職金の支払いや負債の整理は行われなかったという。この結果、三原は会社の債務の一部を負うこととなった。企業解散後も葦書房は福子の個人事業として運営を続け、オフィスを福岡市南区内で数度移転している。

現在、福子が代表を務める葦書房には彼女以外の社員はいないが、前述のようにホームページを通じて在庫本の販売を行っている。

福岡市中央区に存在した同名の古書店「古書の葦書房」とは、創業者や資本関係が全く異なるため、混同しないよう注意が必要である。この古書店も運営は続いているものの、2015年に店舗を閉じてからはネット販売のみに特化している。

結論

葦書房は福岡に根ざした出版社として多くの影響を与えた業績を持ち、地域社会にとって重要な存在であった。経営の変遷を経て、今もなお個人事業として活動を続ける葦書房は、その歴史と共に貴重な文化資産となっている。

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