二村忠臣

二村 忠臣

二村 忠臣（ふたむら ただおみ、1898年 - 1966年）は、日本の陸上競技において、特に投擲種目の選手として、また後の体育界で指導的役割を担った人物です。大分県に生まれ、その生涯を通じて日本のスポーツ、特に陸上競技の発展に貢献しました。

投擲選手としての卓越した才能

二村は学生時代から投擲競技で頭角を現しました。1919年（大正8年）に開催された日本陸上競技選手権大会では、円盤投で27メートル76センチの記録を出し、見事優勝を果たします。翌1920年（大正9年）11月の同大会では、その才能をさらに開花させました。この大会で彼は、男子やり投において48メートル45センチ、砲丸投で11メートル21センチという、当時の日本記録を樹立して優勝しました。さらに、前年に制した円盤投でも29メートル84センチを投げ、2年連続の優勝を達成。これにより、彼は日本選手権において複数種目を制し、日本の投擲界を代表する選手としての地位を確立しました。

国際舞台においても、二村は日本代表として活躍しました。1921年（大正10年）に中国の上海で開催された第5回極東選手権競技大会では、投擲競技の代表に選ばれただけでなく、五種競技の代表としても出場し、2位入賞という素晴らしい成績を残しました。続く1923年（大正12年）に大阪で開催された第6回極東選手権競技大会でも日本代表として投擲競技に出場し、特に砲丸投では45フィート（約13メートル71センチ）を記録して優勝しています。

体育指導者・研究者としての活動

二村は競技者としてだけでなく、学術的な研鑽も積みました。1923年（大正12年）には、日本の体育教育の中心であった東京高等師範学校（東京高師）の体育科を卒業しています。卒業後も体育への情熱は衰えず、1924年（大正13年）のパリオリンピックには、東京高師に所属する見学員として日本代表団に同行しました。これは、当時の最先端のスポーツ事情を学ぶ貴重な機会であったと考えられます。

その後、二村は日本の体育界の運営にも深く関与するようになります。1925年（大正14年）、大日本体育協会（現在の日本スポーツ協会）が組織改革を行った際、彼は薬師寺尊正とともに主事という要職に就任しました。これは、競技者としての実績に加え、学識経験も豊富であった二村への信頼の厚さを示す出来事です。

1933年（昭和8年）の時点では、「国民健康保持増進」を目指す財団法人「奨健会」に所属し、一般国民への合理的身体鍛錬法の普及に努めていました。これは、エリートスポーツだけでなく、国民全体の健康増進という広い視野で体育の振興に取り組んでいたことを示しています。

二村はまた、体育に関する啓蒙・研究活動にも熱心に取り組み、複数の著書を出版しています。主なものとしては、『スローイング』（1922年）、『名選手之面影』（1925年）、『オリンピツク陸上競技投擲技の研究』（1925年）、『歩行と体育』（1925年）、『アルス運動叢書 第5 投擲』（1928年）などがあり、これらは当時の体育研究や指導法に大きな影響を与えたと考えられます。競技者としてだけでなく、教育者、組織運営者、そして研究者としても、二村忠臣は日本の近代スポーツ史において重要な足跡を残しました。

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