二河橋

二河橋は、広島県呉市の中心部を流れる二河川に架けられた重要な橋梁です。現在の橋は昭和7年（1932年）に完成した鉄筋コンクリート製で、専ら道路橋として利用されています。しかし、その歴史を遡ると、かつてこの橋の上には広島県内で初めて開通した路面電車である呉市電の軌道が敷かれており、道路と軌道が共用される併用橋として、地域の交通を長年にわたり支えてきました。

橋が建設された背景には、明治期以降の呉の急速な発展があります。明治22年（1889年）の呉鎮守府開庁、そして明治36年（1903年）の呉海軍工廠設立により、呉は一大軍港都市へと変貌を遂げました。これに伴い市内の交通需要が増大し、明治41年（1908年）に市中心部の主要幹線道路に初代の「二河橋」が木橋として架けられました。翌明治42年（1909年）に呉市電が開業すると、二河橋はすぐにそのルートに含まれ、併用橋となります。当時の木橋は交通量の多さから老朽化が早く、補修が課題となっていました。木橋時代の二河橋と市電の様子は、当時の絵葉書にも残されています。

この状況を受けて、より耐久性の高い橋への架け替えが計画され、昭和7年（1932年）に現在の鉄筋コンクリート橋が完成しました。総工事費は当時の金額で77,820円でした。この橋は5つの径間を持つRC桁橋で、中央径間にはカンチレバー構造、両側の側径間には充腹アーチ構造が採用されています。竣工当時の諸元では、橋長約54メートル、全幅約20メートル程度で、軌道、車道、歩道を備えた複合的な構造を持っていました。

完成したばかりの二河橋は、昭和10年（1935年）頃の絵葉書にもその姿が写されており、鋼製の照明灯や花崗岩製の欄干で装飾された近代的な景観を備えていました。しかし、太平洋戦争中に発令された金属類回収令により、鋼製の装飾品は撤去されたと言われています。昭和20年（1945年）の呉市街地への空襲に際し、二河橋がどの程度の被害を受けたかは明らかではありませんが、戦後に作成された資料では、この橋に大きな被害はなかったとされています。

戦後も二河橋は交通の要衝として機能し続け、必要な補修が行われながら利用が継続されました。昭和42年（1967年）に呉市電が廃止された後、二河橋は併用橋としての役割を終え、完全に道路橋となりました。

近年、二河橋の歴史的価値が見直され、平成24年（2012年）には市政110周年記念事業の一環として、歴史的な景観の復元を目的とした整備が行われました。この時、かつて撤去されていた照明灯が復元されるなどの工事が行われ、その際に橋の下から、過去に市電が走っていたことを示すレールの一部が発掘されました。

二河橋は、木橋からコンクリート橋へ、併用橋から道路橋へとその姿を変えながら、近代以降の呉の発展と、それに伴う交通の歴史を物語る貴重な存在です。現在もなお、市民生活や地域経済を支える重要なインフラとして、二河川に架かり続けています。

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