二百十日

二百十日（にひゃくとおか）

二百十日とは、雑節の一つであり、立春から210日後、つまり立春を起算日として209日目にあたる日を指します。一般的には、カレンダー上では9月1日頃がその日として知られています。この日は、台風が多く襲来する、もしくは風が強い日とされることがしばしばありますが、実際には必ずしもそうなるわけではありません。

日付の変動

二百十日の日付は、回帰年と暦年の長さの差により、年によって変わることが特徴です。特に閏日や閏月がその変化に影響を与えますが、閏日が変化の原因ではなく、むしろ変化を抑える効果があるとされています。

新暦における二百十日の具体的な日付を考えると、1985年から2020年までの期間では、閏年には8月31日、平年には9月1日となることが一般的でした。2021年から2056年までの期間では、閏年およびその翌年は8月31日で、それ以外の年は9月1日となります。この周期はより長期的なスパンでは崩れることがあり、日付は8月31日から9月2日まで変動します。中でも9月2日が二百十日となるのは非常に稀で、1873年にグレゴリオ暦に改暦以降、1902年から1951年の間にしか現れませんでした。この日付は次に2203年に見られます。

文学における二百十日

夏目漱石の小説『二百十日』は1906年に発表され、作中ではこの年の二百十日が9月2日とされています。なお、この年は改暦以来、二百十日が9月2日になる数少ない年の一つです。同様に、宮沢賢治の『風の又三郎』でも二百十日が描かれていますが、この作中年でも9月1日が二百十日とされています。二百十日の日付に対する認識は文学の中でも重要なテーマとなっています。

歴史的出来事における影響

1923年に発生した関東大震災は、9月1日に起きましたが、当時の二百十日は9月2日でした。これにより、震災の日は二百十日ではなく「二百九日」にあたります。この9月1日は、防災の日としても制定されており、毎年この日に災害への意識を喚起する取り組みが行われています。

旧暦における二百十日

旧暦では、日付は朔から初めての新月によって変わるため、二百十日もおおよそ7月9日ごろから8月11日ごろまでの間で変動します。

意義と習慣

二百十日は、旧暦8月1日である八朔や二百二十日とともに、農家にとって重要な厄日とされています。また、季節の移り変わりを示す「季節点」としても重視されており、台風の襲来が多い時期とされてきました。そのため、奈良県大和神社では二百十日前の3日に「風鎮祭」が行われるなど、地域によって風を鎮める祭りが催されています。ただし、実際にはこの時期に台風が多いわけではなく、8月下旬から9月中旬にかけての台風襲来が多かったという指摘もあります。

貞享暦と巷説

二百十日を最初に取り入れたとされるのは、暦学者渋川春海が編纂した貞享暦ですが、その背景には一老漁夫の言葉があったと伝えられています。実際に210日目に天候が荒れることが多いという体験から、この考えが広まったとのことですが、矛盾点も指摘されています。特に、当時の日付の記録は既に存在していたことが知られています。

このように二百十日は、ただ単に日付を示すだけでなく、文学や歴史、農業といった多様な側面に影響を与えてきた文化的な意味合いを持つ日であることが分かります。

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