二股口の戦い

二股口の戦い（1869年）

二股口の戦いは、箱館戦争（戊辰戦争の最終局面）における重要な戦闘の一つであり、明治2年4月13日から4月29日（1869年5月24日 - 6月9日）にかけて繰り広げられました。

背景

明治2年4月9日（1869年5月20日）、新政府軍1,500名が乙部に上陸し、箱館を目指して3つのルートに分かれて進軍を開始しました。その中でも二股口は、箱館への最短ルートであり、稲倉石から二股を抜け、大野村に至る峠道でした。二股を通過するためには、大野川沿いの道を進み、川が二手に分かれる地点で渡河し、正面にそびえる台場山を越える必要がありました。

新政府軍は、軍監・駒井政五郎の指揮の下、松前藩兵や長州藩兵を中心とする500名の兵力でこのルートを進撃しました。一方、旧幕府軍は陸軍奉行並・土方歳三が衝鋒隊2個小隊と伝習歩兵隊2個小隊など約300名の兵を率いて、4月10日（5月21日）に二股に到着し、台場山に本陣を構えました。土方軍は、天狗山を前衛とし、台場山周辺の要地に16箇所の胸壁を構築し、新政府軍を待ち受けました。

経過

4月13日（5月24日）午後3時、江差から進軍してきた新政府軍は天狗山を攻略し、そのまま台場山の本陣に向けて攻撃を開始しました。旧幕府軍は、胸壁を盾に小銃で応戦し、激しい銃撃戦が展開されました。兵力で勝る新政府軍は、次々と兵を交代させながら攻撃を繰り返しましたが、旧幕府軍も2小隊ずつ交代で休憩を取りながら小銃を撃ち続けました。日没後から雨が降り出すと、旧幕府軍は弾薬が濡れないように上着を被せて守り、雷管が湿ると懐に入れて乾かすなど、徹底した防戦を続けました。

翌14日（5月25日）午前7時頃、銃弾を撃ち尽くした新政府軍は疲労困憊し、稲倉石まで撤退しました。16時間に及ぶ戦闘で、旧幕府軍は3万5000発もの弾丸を消費しました。戦闘後、土方歳三は状況報告と援軍要請のため、五稜郭へ向かいました。

4月16日（5月27日）、新政府軍の第二陣2,400名が江差に上陸すると、二股方面には薩摩藩兵や水戸藩兵を中心とする援軍が派遣され、弾薬と食糧も補給されました。しかし、新政府軍は二股の堅牢な守りを容易には突破できないと判断し、4月17日（5月28日）以降、厚沢部から山を越えて内浦湾に至る道を山中に切り開き始めました。これは、兵と銃砲弾薬を送り込み、旧幕府軍の背後から二股口を攻撃するという作戦でしたが、この作業も困難を極めました。その間、旧幕府軍では滝川充太郎率いる伝習士官隊2個小隊が増強されました。

4月23日（6月3日）、福山藩が警備していた新政府軍の天狗山陣地に旧幕府軍の斥候が接近し、戦闘が開始されました。同日午後4時頃、胸壁の突破を断念した新政府軍は、急峻な崖をよじ登り、旧幕府軍の左手の山から小銃を撃ち下ろし、そのまま夜を徹しての大激戦となりました。24日（6月4日）未明、滝川充太郎率いる伝習士官隊が新政府軍陣地に突撃を敢行しました。滝川充太郎は馬に乗ったまま敵陣に突入し、隊士たちも一斉に抜刀して隊長に続きました。不意を突かれた新政府軍は混乱し、自軍の敗走を食い止めようとした駒井政五郎が銃弾を受けて戦死しました。それでも新政府軍は次々と兵を投入しましたが、旧幕府軍を打ち破るには至らず、25日（6月5日）未明、ついに撤退しました。一昼夜以上に及んだこの戦闘で、旧幕府軍は熱くなった銃身を桶の水で冷やしながら小銃を撃ち続けました。新政府軍はこれ以降、台場山の攻略を諦め、迂回路の構築に専念することになりました。

撤退

二股口で土方軍が新政府軍の進撃を食い止めている間、松前と木古内は新政府軍によって突破され、旧幕府軍は矢不来で守勢に回っていました。4月29日（6月9日）、土方は援軍を派遣しましたが、矢不来も突破され、退路を断たれる恐れが生じたため、土方軍は五稜郭への撤退を余儀なくされました。

二股口の戦いは、旧幕府軍の抵抗を示す一例となりました。

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