二角帽子

二角帽子：歴史と文化を彩る帽子

二角帽子は、その名の通り二つの角を持つ帽子で、18世紀後半から19世紀前半にかけて、ヨーロッパやアメリカの軍隊で広く着用されていました。特にナポレオン・ボナパルトが愛用したことで有名になり、「ナポレオン帽」と呼ばれることもあります。

当初は、縁の広い三角[[帽子]]を正面と背面で折り曲げてピンで留めた、半円形に近い形状をしていました。正面には、国籍や階級を示すコケイド（花形帽章）が飾られていました。その後、形状はより三角形に近づき、両端が尖り、コケイドの位置も側面へと移行したものは「コックドハット」と呼ばれました。着用方法は、ナポレオンのように横に被る場合と、縦に被る場合がありました。

二角帽子の素材は、主にビーバーの毛皮で作られたフエルトが用いられていました。ナポレオンが15年間にわたって使用したとされる二角帽子の数は、なんと120個にも及びます。現在では、当時のものが少数の個体が現存しており、時折、オークションに出品されることもあります。

軍服としての使用以外にも、ヨーロッパの君主制国家や日本などでは、文官の正装として19世紀から20世紀初頭まで用いられました。日本では「山形帽」と呼ばれることが多く、海軍の正装帽としても使用されました。また、「コックドハット」の訳語として「三角帽」が使われることもありますが、多くの場合は二角帽子を指しています。

第一次世界大戦後、二角帽子の着用は次第に減っていきましたが、イギリスの植民地総督やイギリス連邦諸国の総督などは、20世紀後半まで儀式用の正装として着用し続けました。

現代における二角帽子

現代においても、いくつかの公式な場で二角帽子を見ることができます。例えば、イギリスでは、議会の停会宣言の際に大法官が三角[[帽子]]、その他の王立委員が二角帽子を着用します。フランスのアカデミー・フランセーズのメンバーは、式典で緑色の刺繍を施した黒の上衣とコックドハット形式の二角帽子を着用します。

フランスのエコール・ポリテクニーク（理工系エリート養成機関）の学生の正装には、赤いストライプ入りの黒ズボン（女性はスカート）と金のボタン、ベルト、そしてコックドハット（公式には二角帽子）が含まれています。かつて女子学生は三角[[帽子]]を着用していましたが、現在は男子学生と同じ二角帽子となっています。

ウィーンのスペイン乗馬学校では、騎手の制帽として二角帽子が用いられています。また、大使の信任状捧呈式など、公式の場では、外交官の正装として、羽毛や金銀の縁取りが施された二角帽子が着用されることがありました。第二次世界大戦頃までは、下級の大使館員も着用していましたが、現在は伝統を持つ少数の国の大使のみが着用しています。

日本の宮内庁車馬課も、現在も二角帽子を正装として使用しており、皇室行事や信任状捧呈式で馬車が用いられる際には、その姿を目にすることができます。

このように、二角帽子は長い歴史を持つ帽子であり、軍服、正装、そして現代においても公式な場で見られるなど、その存在感は現在も失われていません。様々な歴史的背景や文化的な側面を理解することで、二角帽子の持つ深い意味を改めて知ることができるでしょう。

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