エコール・ポリテクニーク

エコール・ポリテクニーク：フランスの理工系エリートを育成する名門校

エコール・ポリテクニーク（École Polytechnique、通称X）は、フランスを代表するグランゼコールの一つであり、パリ近郊のエソンヌ県パレゾーに位置する高等教育研究機関です。フランス革命期の1794年、数学者ラザール・カルノーとガスパール・モンジュによって創設され、ナポレオン・ボナパルトの下で軍学校としての側面も持ちました。現在も国防省が管轄していますが、理工系エリート養成機関としての役割が主となっています。

歴史と伝統

エコール・ポリテクニークの歴史は、フランス革命という激動の時代にまで遡ります。当初は「国民公務員中央学校（École centrale des travaux publics）」という名称で設立され、その後、ナポレオンによって軍学校として再編されました。19世紀にはフランスの産業革命や技術開発に大きく貢献し、多くの著名な科学者、技術者、政治家を輩出しました。1976年にはパリ市内から現在のキャンパスに移転、そして2019年にはパリ工科大学(Institut Polytechnique de Paris, IP Paris)を構成する6つのグランゼコールの1校となりました。2020年にはパリサクレー大学の設立にも関わっています。

エコール・ポリテクニークは、幾度もの歴史的出来事の中を歩んできました。1814年のパリ防衛戦や1830年の7月革命には、学生も参加しています。1972年には女性学生の入学が許可され、伝統と革新が共存する機関として発展を続けています。東京大学工学部とは1994年1月に国際交流協定を結んでいます。

教育内容と特徴

エコール・ポリテクニークは、4年間の課程で「Ingénieur Polytechnicien」の理工系学位を授与します。入学は難関で、高校卒業後の2年間、Classes préparatoires aux grandes écoles（プレパ）と呼ばれる準備課程を経て、厳しい入学試験を突破する必要があります。試験は筆記試験と口述試験からなり、数学、物理、化学、コンピューターサイエンスなどが科されます。

入学後は、厳格なカリキュラムと高度な教育が学生を待ち受けます。約500名の学生（フランス人約400名、留学生約100名）は、軍事訓練や官庁への体験研修などを通して、実践的な能力を磨きます。在学中は少尉に任官され、卒業後10年間は公務員として働く義務があります。

2、3年次は全寮制の寄宿生活を送ります。4年次には他のグランゼコールに派遣され、修士号を取得します。成績優秀者は、派遣校名の前に「X-」を冠した称号を与えられます(例えば「X-Mines」、「X-Ponts」など)。5年次は企業研修や海外留学を経て、卒論を提出して卒業します。

著名な出身者

エコール・ポリテクニークは、数多くの著名な人材を輩出しています。3名のノーベル賞受賞者、1名のフィールズ賞受賞者、そして3名ものフランス大統領をはじめ、科学者、技術者、政治家、経済界のリーダーなどが名を連ねます。アルベール・カコー（コルコバードのキリスト像の内部構造設計など）、アンドレ・シトロエン（シトロエン創業者）、アンリ・ベクレル（放射線の発見者）、ヴァレリー・ジスカール・デスタン（元フランス大統領）、カルロス・ゴーン（元日産自動車社長兼CEO）、ジャン＝クリストフ・ヨッコス（フィールズ賞受賞者）、ベルナール・アルノー（LVMH会長）など、多岐にわたる分野で活躍する人材が数多くいます。

軍事的な側面

歴史的経緯から国防省が所管していますが、エコール・ポリテクニークは軍事系グランゼコールではなく、理工系グランゼコールです。しかし、入学時の軍事訓練や卒業後の公務員としての義務など、軍事的な側面は未だ残っています。近年は、その軍事色は薄れつつありますが、伝統的な正装や特別なイベントでの制服着用など、歴史的伝統は大切に受け継がれています。

まとめ

エコール・ポリテクニークは、フランスのみならず世界的に名高い理工系エリート養成機関です。その厳格な教育システムと伝統は、世界中の多くの大学に影響を与えており、今後もフランスの科学技術発展に貢献していくことが期待されています。

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