二重奏 (弦楽器)

弦楽器による二重奏曲

弦楽器による二重奏とは、文字通り2つの弦楽器によって演奏されるアンサンブル、あるいはそのために書かれた楽曲を指します。最も一般的なのはヴァイオリンやヴィオラ、チェロといったヴァイオリン属の楽器の組み合わせですが、コントラバスが用いられる例も見られます。弦楽四重奏やピアノ三重奏のように、特定の楽器編成が標準として定まっているわけではありません。そのため、単に「弦楽二重奏」という言葉が特定のアンサンブル形態を指す固有名詞として広く使われることは稀です。

編成と形態

この形態における編成は非常に多様です。例えば、ヴァイオリン2本、ヴァイオリンとヴィオラ、ヴァイオリンとチェロ、チェロとコントラバスなど、実に様々な組み合わせが存在します。この自由度の高さが、弦楽器二重奏の一つの特徴と言えるでしょう。

また、弦楽四重奏団のような常設の演奏団体が数多く存在するのとは異なり、弦楽器二重奏を専門とする常設のグループはほとんど見られません。多くの場合、特定の演奏会や録音の機会に合わせて、2人の奏者がその都度集まって演奏を行います。これは、決まった編成を持たないアンサンブル形態であることとも関連しています。

作品とレパートリー

弦楽器二重奏のための楽曲は、弦楽四重奏曲などに比べると作品数は多くありません。しかし、音楽史上の重要な作曲家たちによって、魅力的な作品が生み出されています。演奏会で頻繁に取り上げられる機会は限定的かもしれませんが、室内楽のレパートリーとして重要な位置を占めています。

代表的な作品としては、以下のようなものが挙げられます。

ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト:
ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 ト長調 K.423
ヴァイオリンとヴィオラのための二重奏曲 変ロ長調 K.424
（これらはサルツブルクの大司教が病気で演奏できなくなった際に、ミヒャエル・ハイドンのために作曲したと言われています。）
ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン:
2つのオブリガート眼鏡付きの二重奏曲 WoO.32（ヴィオラ、チェロ）
（ベートーヴェン自身が視力が悪く、眼鏡をかけながら演奏したことからこの愛称がついたとされます。）
ヘンリク・ヴィエニャフスキ:
2つのヴァイオリンのためのカプリース
（ヴァイオリン学習者のための練習曲としても知られています。）
モーリス・ラヴェル:
ヴァイオリンとチェロのためのソナタ
（第一次世界大戦の犠牲者に捧げられた作品です。）
ゾルターン・コダーイ:
ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲
ベーラ・バルトーク:
2つのヴァイオリンのための44のデュオ
（教育目的で書かれた短い小品集ですが、優れた音楽性を持っています。）
セルゲイ・プロコフィエフ:
2つのヴァイオリンのためのソナタ
ジョアキーノ・ロッシーニ:
チェロとコントラバスのための二重奏曲 ニ長調
ボフスラフ・マルティヌー:
ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲 第1番（1927年）
ヴァイオリンとチェロのための二重奏曲 第2番（1957年）
3つのマドリガル（ヴァイオリン・ヴィオラ）（1947年）
カール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフ:
ヴィオラとコントラバスのためのソナタ 変ホ長調
ヨハン・ハルヴォルセン:
* ヘンデルの主題によるパッサカリアとサラバンド（ヴァイオリン・ヴィオラ）
（ヘンデルのチェンバロ組曲の主題に基づき、技巧的な二重奏に編曲した作品です。）

これらの作品は、それぞれの楽器の特性を活かし、2つの楽器だけで豊かな響きや対話を生み出す魅力に満ちています。小編成だからこそ、各奏者の技術や音楽性がより直接的に伝わる形態と言えるでしょう。

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