カール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフ

カール・ディッタース・フォン・ディッタースドルフ男爵は、18世紀後半のウィーンで活躍した作曲家であり、優れたヴァイオリニストでもありました。当初はカール・ディッタースと名乗っていましたが、後に貴族に列せられ、ディッタースドルフ男爵を称するようになります。彼はハイドンやモーツァルトと同時代を生きた音楽家であり、その音楽活動は多岐に渡りました。

生い立ちと初期の音楽活動

1739年にウィーンで生まれたディッタースドルフは、幼少期から音楽の才能を示しました。父は宮廷劇場の衣装デザイナーでしたが、息子の音楽への関心と才能を認め、音楽家を教師に付けました。さらに、ザクセン＝ヒルトブルクハウゼン公子ヨーゼフに見出され、特別な教育を受ける機会を得ました。この公子は、神聖ローマ帝国の元帥であり、皇帝に重用されていた人物です。

1761年、22歳でウィーンの宮廷歌劇場管弦楽団に入団しました。この時、楽長を務めていたのは、25歳年上のグルックでした。当時のウィーンで最高の楽団の一つはヨーゼフ公子の楽団で、アウアースペルク邸で毎週金曜日に演奏会が開かれていました。1763年には、グルックと共にイタリア旅行を経験し、音楽の知識と見識を広げました。

グロースヴァルダインとパトロンの存在

1765年から1769年まで、ディッタースドルフはミヒャエル・ハイドンの後任として、ハンガリーのグロースヴァルダイン（現在のルーマニア、オラデア）の司教の楽長を務めました。1770年には、ブレスラウの領主司教も務めたシレジア貴族シャフゴチ伯爵家が彼のパトロンとなりました。この時期に、イタリア語のオペラ・ブッファを9曲作曲しており、ローマ教皇アレクサンデル3世から黄金拍車章を授与されています。彼は、シャフゴチ家に仕え、オーストリア領シレジアのヨハニスベルク城（現在のチェコ、ヤヴォルニーク近郊）で活動しました。

1772年には、マリア・テレジアによって貴族に列せられ、フォン・ディッタースドルフの家名が与えられました。

オペラ作曲家としての成功と晩年

ディッタースドルフは、1786年に皇帝の命令でオペラ『医師と薬剤師』を作曲し、1788年にケルトナー・トーア劇場で初演されました。このオペラは大成功を収め、当時、モーツァルトの栄光を奪うほどだったと伝えられています。しかし、1795年にパトロンであったシャフゴチ伯爵が亡くなると、ディッタースドルフは年金でかろうじて生活するようになりました。晩年は関節炎と貧困に苦しみましたが、イグナーツ・フォン・シュティルフリート男爵の好意で、ボヘミアのロート・ロータ（現在のチェコ、チェルヴェナー・ルホタ）の住居を提供され、家族と共に残りの人生を過ごしました。

彼は、1799年10月24日にロート・ロータ近くのノイホーフ（現在のチェコ、ノヴィー・ドヴール）で息を引き取りました。

ヴァイオリニストとしての才能

コントラバス協奏曲を残しているため、コントラバス奏者と誤解されることもありますが、実際にはブルク劇場で定期演奏会が開催されるほどのヴァイオリン演奏の巨匠でした。彼は、数多くのヴァイオリン協奏曲も作曲しています。ディッタースドルフの作品は当時好評で、1760年代初期には、レオポルト・ホフマン、ヨセフ・ハイドン、ヴァンハルらと並び、ウィーン楽壇の指導的な立場にありました。ハイドン、モーツァルト、ヴァンハルとは弦楽四重奏を組んだこともあります。オペラやジングシュピールにおいては、ウィーンだけでなく広く大衆に普及しました。

しかし、晩年は出版社から出版を断られ、自分の時代が過ぎ去ったことを自覚していました。最晩年の1799年には自叙伝を書いています。

主要作品

ディッタースドルフは、多岐にわたるジャンルの作品を残しました。

コントラバスと管弦楽のための協奏曲 変ホ長調
ヴィオラ、コントラバスと管弦楽のための協奏交響曲 ニ長調
フルート協奏曲 ホ短調
オラトリオ
35曲のオペラ
『医師と薬剤師』（Doktor und Apotheker, 1786年、ウィーン初演）
『赤ずきん』（Das rote Käppchen, 1788年、同上）- この曲のアリエッタを元に、ベートーヴェンがピアノのための変奏曲（WoO66）を作曲。
ハープ協奏曲 イ長調
9曲の交響曲 - うち6曲はオウィディウスの『変身物語』による。
6曲の弦楽四重奏曲
* 12曲の弦楽五重奏曲

これらの作品は、彼の音楽的多様性と才能を示しており、後世にも影響を与えています。

ディッタースドルフは、音楽史において重要な役割を果たした作曲家の一人と言えるでしょう。

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