二風谷村

二風谷村

二風谷村（にぶだにむら）は、北海道の沙流郡に属し、かつて行政村として存在した地域です。現在では、平取町の一部である「字二風谷」の領域にほぼ相当します。行政村としての二風谷村は、明治期に誕生し、大正期に周辺地域との合併を経てその歴史に幕を閉じましたが、この地名は現在も平取町の一部として受け継がれています。

沿革

この地域の歴史は古く、行政村が発足する以前の様子は、江戸時代末期の記録にも見られます。安政5年（1858年）、蝦夷地を探査した探検家、松浦武四郎の残した記録には、当時の「ニフタニ村」に関する興味深い記述が見られます。その記録によれば、当時のニ風谷地域は、「ホンニフタニ」、「ビハウシ」、「カンカン」という三つの主な集落から成り立っていたとされています。そして、「エニセテキ」という人物が地域の指導者である乙名（おつな）の役目を担っていました。これは、近代的な行政区分が導入される前の、アイヌ民族の伝統的な社会構造の一端を示すものです。

明治時代に入り、日本の近代化が進む中で、地方行政の仕組みも整備されていきました。明治25年（1892年）には、地域の子供たちのための教育機関として、二風谷尋常小学校が開校しました。これは、地域の住民にとって教育の機会が提供され始めた重要な出来事でした。

近代的な地方行政組織としての「二風谷村」が正式に誕生したのは、明治30年（1897年）1月1日のことです。これにより、それまでの慣習的な集落単位のまとまりから、日本の近代地方自治制度に基づいた行政村として位置づけられることとなりました。これは、この地域が北海道の行政区分の中に明確に組み込まれたことを意味します。

行政村として発足した二風谷村の初期の状況を知る手掛かりとして、人口に関するデータがあります。大正9年（1920年）に実施された第一回国勢調査では、当時の二風谷村の人口が311人と記録されています。これは、当時の村の規模を示す一つの指標となります。

しかし、行政村としての二風谷村の期間は長くは続きませんでした。大正12年（1923年）10月1日、地方行政の再編が進む中で、二風谷村は、紫雲古津（しうんこつ）、長知内（おさちない）、幌去（ほろしゃり）、荷菜（からなし）、荷負（におい）、貫気別（ぬっきべつ）、荷菜摘（からなしつみ）といった周辺の七つの村と共に、当時の平取村と合併することとなりました。この合併により、行政村としての二風谷村はその歴史的な役割を終え、より広範な平取村の一部となりました。この合併は、後の平取町の基礎を形成する重要な過程の一つでした。行政村としての名前は消滅しましたが、その地域は現在も平取町の字として「二風谷」の名を残しており、その歴史を今に伝えています。

行政村としての二風谷村の存在期間は比較的短かったものの、江戸時代末期から近代にかけてのこの地域の社会構造の変化、教育の始まり、そして近代地方行政への編入といった重要な歴史的変遷を示す存在として、その沿革は地域の歴史を知る上で貴重な情報を提供しています。

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