五人の斥候兵

『五人の斥候兵』の概要

『五人の斥候兵』は、1938年に公開された日本の戦争映画で、日中戦争を背景にしています。制作は日活多摩川撮影所が担当し、当時戦争が全面化する前夜に製作された映画として注目されています。本作は、特に小規模な部隊による偵察行動に焦点を当て、日中戦争の実情を描写しました。

作品背景

作品が制作された1937年には、盧溝橋での衝突をきっかけに日中の緊張が高まっていましたが、なお局地戦の段階にありました。このため、映画における表現は戦争の現実を強調しつつも、直接的な殺戮シーンや過激な描写は避けられました。その結果、映画は限られた兵士たちの勇気や帰還の物語を前面に押し出しました。

映画の評価

本作は公開後、キネマ旬報によって1938年の日本映画ベスト・ワンに選ばれ、多くの観客や批評家に支持されました。劇中には合唱や消灯ラッパといった音楽は使用されていますが、背景音楽は一切用いられておらず、リアルな状況を強調しています。このシンプルな演出が、緊張感のある物語展開に寄与しています。

スタッフとキャスト

監督は田坂具隆が担当し、彼自身の作品が原作でもあります。脚色は荒牧芳郎が手がけ、撮影は伊佐山三郎が行いました。録音は平林龍雄、装置は松山崇が担当しています。キャストには、小杉勇（岡田部隊長）、見明凡太郎（藤本軍曹）、井染四郎（中村上等兵）といった実力派俳優たちが名を連ねています。

受賞歴

『五人の斥候兵』は、1938年にヴェネツィア国際[[映画祭]]でイタリア民衆文化大臣賞を受賞しました。これは、日本映画が海外で初めて受賞した作品であることに意義があります。この受賞により、日本映画が国際的な舞台でも注目されるきっかけとなったのです。

現存する版および脚注

フィルムのオリジナル版は現存していませんが、日活マークが差し替えられたリバイバル版が確認されています。また、映画関連の資料や書籍も多く存在し、特に田坂具隆の著作『五人の斥候兵』は昭和13年にモダン日本社から出版されています。

この映画は、戦争映画としての先駆例となり、その後の作品に多大な影響を与えることになりました。観客にとっても、兵士たちの戦争の現実を知る貴重な作品として評価されています。

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