五人組 (日本史)

五人組とは

五人組とは、江戸時代に領主の命令によって組織された隣保制度であり、主に農民や町民を対象としていました。五人与（ぐみ）や五人組合とも呼ばれます。この制度は、単なる行政組織ではなく、住民同士の相互監視や連帯責任を基盤としたものでした。

五人組の起源と変遷

五人組の起源は、古代の律令制下における五保制に遡ると言われています。その後、豊臣秀吉が治安維持のために下級武士や農民に五人組を組織させたことが、江戸時代の五人組制度の直接的な起源となりました。江戸幕府もこの制度を継承し、キリシタン禁制や浪人取締りのために利用しただけでなく、一般的な統治の末端組織として運用しました。

五人組の仕組み

五人組は、村では惣百姓、町では地主・家持を対象に、近隣の五戸前後を一組として編成されました。各組には組頭と呼ばれる代表者が選ばれ、名主や庄屋の指揮下に入りました。五人組は、相互監視、相互扶助、連帯責任を負う単位として機能し、領主はこれを通じて治安維持、村（町）内の争議解決、年貢の確実な徴収、法令の周知徹底を図りました。

また、各町村では、遵守すべき法令や組ごとの人別、各戸の当主、村役人の連判を記した五人組帳が作成されました。これにより、領主は住民をより詳細に把握し、統制することが可能になりました。

五人組の実態と課題

しかし、五人組の実態は、必ずしも制度の理想通りには機能していませんでした。逃散してしまった家や、実際の住民構成と合わない内容が五人組帳に記載されていることもありました。また、年貢の滞納などの問題については、村請制の下では五人組ではなく、村落全体で協議し、責任を負うのが一般的でした。

さらに、一つの村の中に複数の領主が混在するような地域では、領主が編成した五人組と、村が居住区域ごとに定めた「郷五人組」が並存するケースも見られました。このような状況は、五人組制度が複雑で、地域の実情に応じて柔軟に運用されていたことを示しています。

五人組の影響

五人組制度は、名主や庄屋の権威を間接的に裏付け、住民の生活を制約する側面もありましたが、同時に、町村の自治を強化する役割も果たしました。また、米沢藩の上杉鷹山のように、五人組を再編し、相互扶助を重視した伍什組合を編成した藩もありました。

近代的自治法の整備とともに、五人組制度は法的には消滅しましたが、その影響は、第二次世界大戦中の隣組や、戦後の町内会に受け継がれています。また、現代の企業における組織の問題、いわゆる大企業病にも、五人組の影響が見られるという指摘もあります。

五人組は、江戸時代の社会を理解する上で重要な制度であり、その歴史的な意義は、現代社会にも多くの示唆を与えてくれます。

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