五十口径三年式十二糎七砲

五十口径三年式十二糎七砲

五十口径三年式十二糎七砲は、日本海軍が駆逐艦に搭載した艦載砲です。この砲は、荒天時や戦闘時の破片から乗員を保護するため、駆逐艦搭載砲としては初めて全周囲に防盾を標準装備したことが大きな特徴です。吹雪型駆逐艦をはじめ、多くの駆逐艦に採用され、その後の日本海軍駆逐艦の主砲として活躍しました。

概要

本砲の設計時期は正確には不明ですが、1923年の大正12年度艦艇補充計画に吹雪型駆逐艦の建造計画があり、1928年には吹雪が竣工し、本砲が搭載されていたことから、この間に設計・完成したと考えられています。この砲は、対空射撃に対応した両用砲ではなく、対艦戦闘を重視した平射砲として開発されました。

特徴

本砲は、水平射撃時に初速910m/秒、毎分10発の射撃能力を持つ優秀な砲でした。これにより、艦隊戦（特に夜戦）において優位性を保つことができましたが、対空戦闘においては、その能力は限定的でした。平射砲であるため、最大仰角に制限があり、対空戦闘への対応が課題でした。そのため、最大仰角を増大させるなどの改良が試みられましたが、照準器や装填機構の抜本的な改良には至らず、低空侵入機など特定の条件下でしか有効な対空射撃はできませんでした。

各型

連装砲架

A型

この砲は、各型の基本となったタイプで、吹雪型（特型）駆逐艦I型および改I型に搭載されました。最大仰角は40度で、2門の砲が同時に動作する連装砲です。砲室は3.2mmの鋼板製で、破片防御機能は限定的でしたが、波浪の影響を受けずに操作できる点は画期的でした。砲室の重量は24.5トンでした。

B型

B型は、吹雪型（特型）駆逐艦II型、III型、初春型の一部、改装前の千鳥型水雷艇に搭載されました。この型では、左右の砲が独立して動作できるようになった点と、最大仰角が40度から75度に引き上げられた点が大きな改良点です。しかし、弾頭部と装薬が別々であったため、装填時に砲身を水平に戻す必要があり、高射時の連射速度は毎分4発と遅く、対空戦闘能力は低いままでした。また、2門の砲を独立可動させる機構の追加により、重量が増加（約32トン）し、搭載艦の重心が高くなる要因にもなりました。友鶴事件後の改修で、防盾が改良され、形状はC型に近いものになりました。

B型改1

B型改1は、仰角が55度に改良されたもので、初春型駆逐艦の有明、夕暮に搭載されました。

C型

C型は、B型砲を平射専用に戻したもので、最大仰角は55度です。白露型駆逐艦、朝潮型駆逐艦、陽炎型駆逐艦に搭載されました。砲室の重量は不明ですが、A型とB型の中間程度と推定されています。

※C型砲架の搭載は、夕立（白露型）以降とする資料もあります。

D型

D型は、夕雲型、島風（丙型）に採用された型で、再度仰角が75度まで引き上げられましたが、装填機構は改善されませんでした。

単装砲架

A型

B型連装砲架に相当する単装砲架で、仰角は75度、砲室重量は約17トンです。改装前の千鳥型水雷艇に搭載されました。

A型改1

仰角75度で、初春型駆逐艦に搭載されました。白露（白露型駆逐艦）には仰角55度とした本型が搭載されました。

B型

仰角55度で、白露を除く白露型駆逐艦に搭載されました。

参考文献

雑誌『丸』編集部『写真 日本の軍艦 第10巻 駆逐艦Ⅰ』（光人社、1990年） ISBN 4-7698-0460-1
雑誌『丸』編集部『写真 日本の軍艦 第11巻 駆逐艦II』（光人社、1990年）
雑誌『丸』編集部『軍艦メカ4 日本の駆逐艦』（光人社、1991年）
森恒英著『軍艦メカニズム図鑑 日本の駆逐艦』（グランプリ出版 1995年）
雑誌『TAMIYA NEWS』別冊『軍艦雑記帳』第4刷（株式会社 田宮模型 1991年）

関連項目

大日本帝国海軍兵装一覧

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