五十嵐洋一

五十嵐 洋一

プロ野球審判員として長年にわたりパシフィック・リーグで活躍した五十嵐 洋一（いがらし よういち）は、1946年9月23日に東京都で生を受けました。審判部副部長も務めるなど、審判組織内で要職を経験しています。

経歴

横浜翠嵐高校を卒業後、法政大学を経て、1967年にパシフィック・リーグ審判部に入局しました。この時の同期には、後に審判部長となる前川芳男氏がいました。五十嵐氏は、1977年に審判員の袖番号が初採用された際、パ・リーグを代表する番号の一つである「1」を割り当てられ、1998年に退職するまでこの番号を背負いました。後にこの番号は秋村謙宏審判員に引き継がれています。プロの審判を目指すきっかけとなったのは、大学の浪人時代にアルバイトとしてアマチュア野球の審判を務めた経験だったと言います。

審判としての歩み

リーグを代表する審判員の一人として、着実にキャリアを重ねました。通算試合出場数は2821試合に及びます。オールスターゲームには5回（1976年、1980年、1984年、1989年、1992年）出場し、特に1980年と1984年の第3戦では球審を務めました。日本選手権シリーズには9回（1984年、1986年、1989年、1992年〜1994年、1996年〜1998年）出場しており、球史に残る多くの名勝負に立ち会っています。日本シリーズでの球審経験も豊富で、1986年の第8戦、1989年・1993年の第1戦、1994年の第6戦、そして1998年の第2戦などでマスクを被りました。

特徴的な試合

五十嵐氏が審判を務めた試合の中には、記憶に残るものが少なくありません。

1978年8月31日、ロッテ対阪急戦では、今井雄太郎投手の完全試合達成時にライト側外野審判を務めました。
オールスターゲームでは、1980年第3戦で江川卓投手の初登板、1984年第3戦で同じく江川投手の8者連続奪三振という、当時の注目投手の記録的な瞬間に球審として立ち会いました。
1987年のロッテ対西武戦では、打者佐藤健一選手の守備妨害を巡る判定で、ロッテ側からの激しい抗議に対し、マスクを地面に叩きつけ「冗談じゃないよ!!」と怒鳴り返すという、審判としての気迫を示す一幕がありました。
1988年10月19日、「10.19」として知られるロッテ対近鉄ダブルヘッダー第2試合では3塁塁審を務めました。
1989年10月12日、西武対近鉄戦のダブルヘッダー第1試合では、ラルフ・ブライアント選手の3打席連続本塁打（ダブルヘッダー全体では4打数連続）を球審として見届けました。
1990年6月6日の日本ハム対近鉄戦では、ブライアント選手の東京ドーム天井スピーカー直撃の認定ホームラン時に2塁塁審でした。
* 日本シリーズでは、1993年第4戦での飯田哲也選手の「スーパーバックホーム」の際の1塁塁審、1994年第6戦での長嶋茂雄監督の巨人初の日本一達成時の球審、1996年第5戦でのオリックス初の日本一達成時の3塁塁審、そして1998年第6戦での横浜ベイスターズ38年ぶり日本一達成時の2塁塁審（これが五十嵐氏の最後の審判試合となりました）など、歴史的な場面に関わっています。

装備への考え方

審判としての装備にもこだわりが見られます。プロテクターについては、採用当初からインサイドプロテクターの使用を希望していましたが、当時の上層部から「アメリカの真似はけしからん」「体格が細い」といった理由で反対され、長年アウトサイドプロテクターを使用せざるを得ませんでした。身長177cmに対し、当時の体重は約70kgと、確かに現在主流のインサイドプロテクターを使うには細身だったのかもしれません。しかし、1986年頃に念願のインサイドプロテクターへ変更し、その後もアウトサイド時代と変わらない正確な判定を下し続けました。マスクについては、アウトサイドプロテクター時代はバーマスクでしたが、インサイド変更後はフレームマスクに変更し、途中からスロートガードを装着しました。一時期は、当時まだ珍しかったクレストカラーパッド付きのマスクを使用していたこともあります。上着に関しては、球審を務める際にブレザーを着用せず、シャツ姿で臨むことが多かったのも特徴です。日本シリーズでの球審経験9回のうち、ブレザー姿だったのは1986年と1989年のみで、1993年、1994年、1998年の球審時はシャツ姿でした。

キャリアの終幕

順調にキャリアを積み重ね、パ・リーグ審判部を牽引する存在だった五十嵐氏の審判人生は、予期せぬ形で幕を閉じます。1998年11月23日に発生した傷害事件により逮捕されたことが原因で、同年12月25日、所属していた連盟から契約解除処分が下されました。連盟側は依願退職を勧めたものの、五十嵐氏はこれを拒否し、敢えて解雇されることを選択したと言われています。この事件がなければ、プロ野球審判員として史上6人目となる通算3000試合出場を達成し、さらには次期審判部長のポストに就く可能性も十分にあり得た、とする見方もあります。通算2821試合出場という記録は、志半ばでの退任であったことを物語っています。

球界を離れて

プロ野球界を去った後、五十嵐氏は新たな人生を歩んでいます。2015年8月末までは、東京都赤坂にてお好み焼き店を経営していました。また、プライベートでは愛犬家であることも知られています。

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