五十肩

五十肩（肩関節周囲炎）とは？

五十肩、もしくは四十肩として知られる肩関節周囲炎は、肩の痛みと運動機能の制限を主な症状とする疾患です。正式名称は肩関節周囲炎で、肩関節とその周辺組織の炎症が原因です。かつては腱板損傷や石灰沈着性腱板炎なども五十肩に含まれていましたが、現在は原因が特定できる疾患は除外され、以下の3つの条件を満たす場合に五十肩と診断されます。

1. 肩の痛みと運動障害がある
2. 患者の年齢が40歳以上である
3. 明らかな原因がない

五十肩の症状

五十肩の症状は段階的に進行します。初期には肩関節周囲に鈍い痛みが生じ、腕の可動域が徐々に制限されていきます。症状が進むにつれて痛みが鋭くなり、腕を急に動かしたり、特定の動作を行う際に激しい痛みを感じるようになります。

痛みによって腕を真上に上げることが困難になったり、後ろに回すことがほとんどできなくなったりするなど、運動機能に著しい障害が現れます。症状が重症化すると、日常生活に大きな支障をきたすようになり、洗髪、歯磨き、食事の準備、洗濯、着替え、寝返りなど、多くの動作が困難になります。

痛みの発生は片方の肩のみの場合と、両方の肩に発症する場合があります。片方の肩に発症した場合、もう片方の肩にも発症する確率が高いとされています。痛みのピーク時には、肩の痛みだけでなく、腕全体のだるさや痺れを伴うこともあります。常に患部をさすっていないと我慢できないと訴える患者もいます。

初期症状から痛みのピークまでには数ヶ月かかり、ピークは数週間続きます。その後、徐々に痛みが和らいでいきますが、鋭い痛みが消えるまでには半年程度、物を投げられるようになるまでには1年前後かかる場合もあります。リハビリテーションによって発症前の状態に回復できるかどうかは様々ですが、多くの場合、完全に元の状態に戻ることは難しいです。

五十肩の原因は関節包の癒着による可動域の制限であると考えられていますが、なぜ関節包が癒着するのかについては、現在の医学では解明されていません。

五十肩の治療

五十肩の治療は、症状の段階に応じて異なります。炎症が強い初期（炎症期）には、肩を無理に動かさないように安静を保ち、患部の保温に努めます。拘縮期（関節包の癒着が進行する時期）には、温熱療法やストレッチ、コッドマン体操（アイロン体操）などの運動療法が有効です。痛みが和らいで来たら、徐々に肩の運動量を増やしていきます。

五十肩は、健康保険が適用される鍼治療の対象疾患の一つでもあります。薬物療法としては、ヒアルロン酸やキシロカインの関節内注射が行われます。ジアゼパムを併用することで、短期間で症状が改善し日常生活に支障がなくなる場合もあります。ステロイドの関節内注射は、腱の劣化を防ぐため、最大2ヶ月までとされています。

ジアゼパムは抗不安作用を持つ薬剤ですが、長期服用による依存症のリスクがあるため、使用には注意が必要です。しかし、激しい痛みを緩和し、可動域を回復するために必要な期間と薬剤の投与期間はほぼ一致するため、大きな問題は少ないとされています。症状が改善しない場合は整形外科を受診する必要があります。

まとめ

五十肩は、原因不明の肩の痛みと運動制限をきたす疾患です。症状の進行や治療法を理解することで、適切な対応を行い、日常生活への影響を最小限に抑えることが大切です。早期に医療機関を受診し、専門医の指導の下で治療を進めることが推奨されます。

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