五百籏頭薫

日本の歴史学者であり政治学者でもある五百籏頭薫（いおきべ かおる）は、1974年に生まれた人物である。現在、東京大学大学院法学政治学研究科の教授を務め、日本政治外交史を専門としている。

五百籏頭氏は、学者・研究者を多く輩出する家系に育った。祖父は神戸大学名誉教授（経済学）で、教皇庁大聖グレゴリウス勲章を受章した五百籏頭眞治郎氏。父は、神戸大学や防衛大学校の名誉教授、兵庫県立大学理事長などを歴任し、日本政治史研究の大家として知られる五百籏頭眞氏である。また、伯父に南山大学名誉教授（神学）の五百籏頭博治氏、従兄弟には同志社大学商学部教授（経済学）の五百籏頭真吾氏、岡山大学大学院自然科学研究科准教授（情報通信システム学）の五百籏頭健吾氏がいる。

学歴としては、1989年に六甲中学校を、1992年に六甲高等学校を卒業した。同年、東京大学教養学部文科一類に入学し、大学在学中には第一高等学校・東京大学弁論部に所属した。1996年に東京大学法学部第3類（政治コース）を卒業。その後、東京大学大学院に進学し、2011年9月22日、学位請求論文「条約改正史：法権回復への展望とナショナリズム」により、博士（法学）の学位を取得している。

研究者としてのキャリアは、1996年に東京大学大学院法学政治学研究科の助手として始まった。1999年に同研究科の講師に昇進。2001年には旧・東京都立大学法学部の助教授に転じた。2007年からは東京大学社会科学研究所の准教授を務め、2014年より現職の東京大学大学院法学政治学研究科教授として、研究・教育活動にあたっている。

五百籏頭氏の研究は、近代日本の政治と外交の歴史を深く掘り下げることに焦点が当てられている。単著として、『大隈重信と政党政治 - 複数政党制の起源 明治14年 - 大正3年』（東京大学出版会、2003年）では、日本の初期議会における政党の形成と機能に光を当てた。博士論文を基にした『条約改正史 - 法権回復への展望とナショナリズム』（有斐閣、2010年）は、不平等条約の改正交渉とその国内的背景を詳細に分析した代表的な業績である。また、『〈嘘〉の政治史 - 生真面目な社会の不真面目な政治』（中央公論新社、2020年）では、政治における「嘘」の役割を歴史的に考察している。

編著にも積極的に携わっており、坂本一登氏との共編『日本政治史の新地平』（吉田書店、2013年）では「福地源一郎研究序説」を執筆。松田宏一郎氏との共編『自由主義の政治家と政治思想』（中央公論新社、2014年）では「進歩政党　統治の焦点」を担当した。宇野重規氏との共編『ローカルからの再出発』（有斐閣、2015年）では「近代日本のローカルガバナンス」などを執筆し、地方政治にも視野を広げている。さらに、小宮一夫氏らとの共編『戦後日本の歴史認識』（東京大学出版会、2017年）では「歴史認識の歴史へ」を執筆し、歴史認識というテーマにも取り組んでいる。

主要な論文や論考も多数発表しており、「関税自主権の回復をめぐる外交と財政」（『日本政治研究』、2004年）や、『東アジア国際政治史』（2007年）所収の「開国と不平等条約改正」、『中国近代外交の胎動』（2009年）所収の「隣国日本の近代化」などがある。特定の時代や思想家に関する論考として、『岩波講座日本歴史 第16巻・近現代3』（2014年）所収の「藩閥と政党」、『吉野作造政治史講義』（2016年）所収の「吉野作造政治史の射程」なども執筆している。

五百籏頭薫氏は、これらの多岐にわたる研究活動を通して、近代日本の政治・外交史における重要なテーマを深く掘り下げ、その研究成果を精力的に発表し続けている。

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