五藤光学研究所・マークX

マークX：システム望遠鏡の先駆け

マークXは、五藤光学研究所が1976年に発売した赤道儀式架台です。この架台の最大の特徴は、使用目的や観測スタイルに合わせて、さまざまなパーツを自由に組み合わせることができるシステム構成である点です。このシステム設計は、当時の天体望遠鏡業界において非常に画期的であり、後のシステム望遠鏡の先駆けとなりました。

高い精度と堅牢性

マークXは、その高い精度にも定評があります。高精度メタルの中空軸に極軸を挿入する構造により、安定した動作を実現。さらに、耐寒設計も施されており、気温が摂氏-20度という極寒の環境下でもスムーズに作動します。この信頼性の高さから、多くの天文ファンに支持されてきました。

印象的な外観

外装にはメタリックブルーが採用され、その鮮烈な色彩は当時の天体望遠鏡愛好家に大きな衝撃を与えました。この特徴的なデザインも、マークXの人気を支える要因の一つです。現在は製造中止となっていますが、中古市場ではいまだに高い人気を誇っています。

豊富なラインナップ

マークXのシステムを構成するパーツは多岐に渡ります。以下に主なパーツを一覧で紹介します。

基本構成

MX-1 ベースモデル: 赤経軸で、極軸ファインダーを内蔵しています。他のパーツとの接続も可能で、写真用三脚にも搭載できます。
MX-2 赤緯軸: MX-1に取り付け、筒受や観測装置取付板などを接続します。
MX-3 架台: MX-1を三脚に載せるためのパーツです。
MX-4 観測装置取付板: MX-2やMX-1に取り付け、様々な観測機材を搭載します。

その他のパーツ

MX-7 汎用軸: 両側に筒受やL型取付板を取り付けられます。
MX-8 L型取付板: 筒受の代わりに使用したり、汎用軸に取り付けて機材を搭載します。
MX-10 バランスウェイト: 3.3kgで、天体望遠鏡のバランス調整に使用します。
MX-20 減速微動装置: 微調整を可能にする装置で、簡易ガイドにも使えます。
MX-22 カーアダプター: 自動車のシガーライターソケットから電源を供給します。
MX-23/24 ACアダプター: 家庭用コンセントから電源を供給します。
MX-25 モータードライブAC: AC電源で使用するモータードライブです。
MX-26 モータードライブDC: DC電源で使用する水晶発振制御のモータードライブです。
MX-27 モータードライブP型: 単一電池で駆動するモータードライブです。
MX-28 コメットトラッカー: 追尾速度を変更できる両軸モータードライブです。
MX-30/31 3cmガイドスコープ: 天体導入やガイドに用いる小型望遠鏡です。II型は微動装置付きです。
MX-40 6.5cm用筒受: 6.5cm鏡筒用の鏡筒バンドです。
MX-41 6.5cmアクロマートF15: 有効径65mm、焦点距離1000mmのアクロマート屈折望遠鏡です。
MX-45 屈折用ユニバーサル筒受: 様々な屈折望遠鏡を取り付けるための筒受です。
MX-50 8cm用筒受: 8cm鏡筒用の鏡筒バンドです。
MX-51 8cmアクロマートF15: 有効径80mm、焦点距離1200mmのアクロマート屈折望遠鏡です。
MX-52/53/54/55 8cmスーパーアポクロマート: 8cmのスーパーアポクロマートレンズを搭載した屈折望遠鏡です。
MX-56A/B/C 8cm標準アポクロマート: カールツァイスのアポクロマートに匹敵する性能を持つ8cmアポクロマート屈折望遠鏡です。
MX-57A/B/C 8cmセミアポクロマート: 8cmのセミアポクロマートレンズを搭載した屈折望遠鏡です。
MX-58/59 8cmEDアポクロマート: EDレンズを搭載し、耐候性に優れた8cmアポクロマート屈折望遠鏡です。
MX-60 12.5cm用筒受: 12.5cm鏡筒用の鏡筒バンドです。
MX-61 12.5cmF8反射: 有効径125mm、焦点距離1000mmのニュートン式反射望遠鏡です。
MX-62 12.5cm反射用ガイディングテレスコープ: 反射望遠鏡用のガイディングスコープです。
MX-70 10cmマクストーフ鏡筒: 有効径100mm、焦点距離1450mmのマクストフカセグレン式望遠鏡です。
MX-80/81 三脚: 長短2種類の三脚があります。
MX-85/86 鉄柱ピラー: 反射望遠鏡用と屈折望遠鏡用の2種類のピラーがあります。
MX-90 キャリングケース: 各パーツを収納して運搬できるアルミケースです。

8cm屈折鏡筒

マークXのシステムの中で特に注目されるのは、豊富なラインナップを誇る8cm屈折鏡筒です。微光天体観測に適したF8.25、汎用性の高いF12.5、そして月面や惑星観測に特化したF15の3種類が用意されていました。これらの鏡筒は、それぞれ異なる観測ニーズに対応できるよう設計されており、マークXシステムの柔軟性を象徴しています。

ポータブル赤道儀としての活用

マークXのシステムは、MX-1ベースモデル、MX-4観測装置取付板、MX-20減速微動装置を組み合わせることで、ポータブル赤道儀として使用することが可能です。この最小構成を一般の写真用三脚に搭載すれば、天体写真撮影のための遠征にも手軽に持ち出すことができます。

参考文献

天文と気象別冊『天体望遠鏡のすべて'81年版』
天文と気象別冊『天体望遠鏡のすべて'83年版』
月刊天文別冊『天体望遠鏡のすべて'85年版』
* 月刊天文別冊『天体望遠鏡のすべて'87年版』


マークXは、その高い品質と柔軟なシステム構成により、天体観測の可能性を大きく広げた名機と言えるでしょう。

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