井ノ内稲荷塚古墳

井ノ内稲荷塚古墳の概要

井ノ内稲荷塚古墳は、京都府長岡京市井ノ内小西に位置する前方後円墳です。この古墳は乙訓古墳群の一部を成しており、国の史跡として指定されています。また、その出土品は長岡京市の指定有形文化財にも認定されています。

この古墳は、京都盆地の南西辺、特に西山山塊から派生する低位段丘（標高42メートル）に築かれています。墳丘はおおむね良好な状態で残されていますが、石室部分は長岡京の造営時に大きな破壊を受けてしまったため、その全貌は完全には把握できていません。墳頂には現在、稲荷社が祀られており、地域の人々に親しまれています。1993年から1997年にかけては、発掘調査が行われ、その結果が数回にわたり報告されています。

墳形と構造

井ノ内稲荷塚古墳の形状は前方後円形を成しており、前方部分は南東の方向を向いています。墳丘の大部分は盛土で作られており、段築は見受けられません。また、墳丘の表面には埋葬に用いる葺石や埴輪の痕跡も見られません。周囲には周溝があたり、一帯を囲っています。

この古墳の埋葬施設は後円部分に位置する片袖式横穴式石室と、前方部分にて設置された木棺による直葬の二つに分けられています。特に、後円部の石室は全長10.1メートルの大型石室であり、古式の畿内型石室として注目を集めています。

出土品

発掘調査からは、後円部の石室から金銅装の馬具や金製の刀装具、装身具、武器、農工具などが見つかりました。一方、前方部の木棺からも装身具や武器、須恵器などが出土しています。こうした出土品からは、古墳の所有者が高い地位にあったことを示す証拠とされ、6世紀前半の古墳時代後期に築造されたと考えられています。

伝統と革新

この古墳が持つ特異な点は、物集女車塚古墳とは異なり、伝統的な釘を用いない組合式木棺を維持しつつ、新たに横穴式石室を採用した点です。このことから、地域の古墳文化においてどのように伝統が受け継がれ、変化していったのかを示す重要な事例となります。

史跡指定と調査の歴史

井ノ内稲荷塚古墳は、1967年から1968年にかけて遺跡分布調査が行われ、1993年から1997年にかけての発掘によってその骨格が明らかにされました。2016年3月1日には国の史跡に指定され、さらなる研究が進められています。出土品は2007年に長岡京市の指定有形文化財として認定され、地域においてその重要性が確認されています。

まとめ

井ノ内稲荷塚古墳は、古代日本の貴族文化を物語る重要な遺跡であり、長岡京市における歴史的な価値と文化遺産を代表する存在です。この古墳の調査結果は、当時の社会構造や文化を理解する上で貴重な手がかりとなります。今後もこの地域での研究が進められることが期待されており、歴史愛好者や研究者にとって興味深い対象となることでしょう。

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