井上仁吉

井上仁吉は、1868年（明治元年）に京都で生まれ、1947年（昭和22年）に亡くなった日本の応用化学者です。彼は、東北帝国大学の総長を務め、工学博士の学位を持ち、号を青崖と称しました。

生い立ちと初期のキャリア

井上は、蘭方医である井上勤所の次男として生まれました。京都一中（現在の京都府立洛北高等学校・附属中学校）を経て、1892年（明治25年）に第一高等学校を卒業しました。その後、1896年（明治29年）に帝国大学工科大学応用科学科を卒業し、横浜瓦斯に入社しました。

大学での活動

1899年（明治32年）には、東京帝大工科大学の助教授に就任しました。1903年（明治36年）には、ドイツのドレスデン大学へ私費留学しましたが、日露戦争のため1905年（明治38年）に帰国し、東京帝大の教授に昇任し、応用化学第1講座を担当しました。1907年（明治40年）には、東京帝大から工学博士の学位を授与されました。

1913年（大正2年）には、東北帝国大学理科大学化学科の講師を兼任し、1918年（大正7年）には東北帝大の兼任教授となりました。翌年、工学部が新設されると、化学工学科教授および初代工学部長に就任しました。彼は「理魂工才」という教育理念を掲げ、授業と研究に尽力しました。

東北帝国大学総長

1928年（昭和3年）6月、井上は第5代東北帝国大学総長に就任しました。1931年（昭和6年）6月までその職を務め、依願免官となり退官しました。退官後、東北帝大名誉教授となりました。その後、東京に移り、東京工業試験所で研究を続けました。1933年（昭和8年）には、工業化学会（現在の日本化学会）の会長に就任しました。

キリスト教への信仰

井上はクリスチャンであり、1919年（大正8年）に亡くなった娘の影響で、日本聖公会の信徒となりました。東京諸聖徒教会や仙台基督教会に所属しました。1928年5月には、東北帝国大学基督教青年会（現在の東北大学YMCA渓水寮）の理事長に就任しました。

教育者としての活動

1933年7月には、香蘭女学校（現在の香蘭女学校中等科・高等科）の校長に就任しました。しかし、太平洋戦争中にミッションスクールに対する圧力を受け、1944年（昭和19年）6月に校長を辞任しました。

著作

井上は、『工業瓦斯』という著作を博文館から1906年に出版しています。

親族

井上の妹には、荒木寅三郎の妻である荒木きんと、田岡嶺雲の妻である田岡みねがいます。

井上仁吉は、応用化学者としてだけでなく、教育者、キリスト教徒としても多岐にわたり社会に貢献した人物でした。

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