荒木寅三郎

荒木寅三郎

荒木寅三郎（あらき とらさぶろう、1866年11月23日 - 1942年1月28日）は、日本の医学者です。京都帝国大学の総長、学習院の院長、枢密顧問官などの要職を歴任し、日本の医学界の発展に大きく貢献しました。

生い立ちと教育

1866年、上野国碓氷郡板鼻宿（現在の群馬県安中市）にて、儒医の次男として誕生しました。11歳で東京へ遊学し、萩原塾で学びました。1882年には東京帝国大学医科大学別課医学科に入学し、1887年に卒業しました。卒業後は郷里に戻り、医師として家業を継ぎました。

研究者としての道

1888年、東京帝国大学医科大学生理学教室の大沢謙二教授のもとに入門し、研究者の道を歩み始めます。1889年4月には、ドイツのシュトラースブルク大学へ留学し、ホッペ＝ザイラー教授に師事して生化学を学びました。

1896年1月に帰国し、第三高等学校医学部の生理学・衛生学教授に就任。1899年9月には京都帝国大学医科大学医化学講座の教授となりました。その後、1903年には京都帝国大学医科大学長に、1915年には公選により京都帝国大学総長に就任しています。

大学運営と要職

1914年には京都帝国大学総長事務取扱を務め、1915年に京都帝国大学で初の公選により総長に就任しました。総長在任中の1920年には帝国学士院会員に選定されました。1928年にはフランス政府からグラン・オフィシエ・ドラゴン・ド・ランナン勲章を受章しています。1929年に総長を辞任した後、京都帝国大学名誉教授となり、同年10月には学習院院長に任命されました。学習院院長は1937年に辞任し、同月、枢密顧問官に親任されています。

研究業績

荒木寅三郎の研究は、生化学と分子生物学の発展を支える重要な基礎となりました。特に、酸素欠乏時の動物体内での乳酸生成に関する研究では、筋肉の無細胞抽出液を用いて乳酸の生成を証明し、後の解糖系代謝の解明に大きく貢献しました。また、腸粘膜にDNA分解酵素DNaseが存在することを初めて発見し、この酵素が後に遺伝現象を担う物質がDNAであることを証明するための重要な手段として用いられ、分子生物学の基礎を築くことになりました。

人物

荒木寅三郎は、研究者としてだけでなく、教育者としても多くの人材を育成しました。また、大学運営においても優れた手腕を発揮し、京都帝国大学の発展に大きく貢献しました。温厚な人柄で、多くの人々から尊敬を集めたといわれています。

死去

1942年1月28日、狭心症のため急逝しました。享年75歳。同年1月30日には正二位に叙されました。墓所は群馬県安中市板鼻の古墳の一角にあります。この墓所は安中市指定の史跡となっています。

親族

妻は井上仁吉の妹である「きん」。長男の新太郎は、京都府立医科大学予科教授を務めました。また、京都帝国大学医学部教授の森島庫太の長女「せつ」を妻に迎えました。娘は陸軍軍医中将の石井四郎に嫁いでいます。

栄典

荒木寅三郎は、数々の位階と勲章を受章しています。1896年に正七位に叙されたのを皮切りに、1942年に正二位に叙されるまで昇進を重ねました。また、勲章では、1907年の勲四等瑞宝章から、1937年の旭日大綬章まで、多くの勲章を受章しています。

関連項目

岸一太 - 荒木寅三郎の教え子

外部リンク

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