井上伊之助

井上伊之助の生涯と業績

井上伊之助（いのうえ いのすけ）は、1882年9月2日に高知県幡多郡川崎村（現在の四万十市）で生を受け、1966年6月20日に神戸で亡くなった日本人の宣教師である。彼の人生は、台湾における宣教と医療活動を通じて多くの人々に影響を与えた。

幼少期から青年期

井上は、小学校で学問を終えた後、地元の病院や村役場で事務員として勤務したが、1900年、さらなる出世を求め東京に上京した。東京では郵便局で働きながら、大成学館で学ぶ日々を送った。この時期、彼はメソジストの本郷教会を訪れ、内村鑑三の著作を通じて宗教に対する興味を深めていった。

1903年、彼は神田の中央福音伝道館に通うようになり、中田重治の指導のもとで洗礼を受ける。さらに、1905年には東洋宣教会の聖書学院に入学し、厳しい学びを重ねたが、1906年には父親が台湾で亡くなるという悲劇に見舞われた。

宣教師としての活動

聖書学院を卒業した井上は、1907年にヘフジバ・ミッションに参加し、千葉県佐倉市で伝道活動を行った。その後、内村鑑三から信仰の指導を受けたことも彼の信仰を深める一助となった。1909年、祈祷中に「台湾原住民への伝道」という神の召命を受けた彼は、佐倉の伝道師を辞職し、医学の学びを始めた。

1911年、日本伝道隊の支援を受け、彼は単身台湾の宣教に向かった。基隆に到着後、台湾原住民のタイヤル族への伝道を開始し、さらに総督府から医療活動を委託され、6年間にわたってカラパイ蕃陣診療所で医療活動に従事した。彼の努力は、病気に苦しむ人々に希望をもたらした。

医療と信仰の融合

帰国後、井上は日本聖公会に加入し、種子島で伝道を続けるが、1922年には再び台湾に渡る。その後、台湾で医師試験に合格すると、現地での医療伝道に本格的に乗り出した。1930年代には、霧社事件の際の被害者を丁寧に診療し、彼の人道的な医療活動が評価されることとなる。

さらに、井上はブヌン族の公医としても活動し、彼の医療活動は地域住民の信頼を集めた。戦後、1947年に帰国命令を受け、台湾原住民にリバイバルが起こったことを聞き、井上の影響力の高さを証明する結果となった。

晩年と影響

帰国後は清水市に住まいを構え、東海大学で保健衛生について教える傍ら、台湾の原住民族についての講演や出版活動を行った。彼の活動は、台湾と日本の文化交流の重要な一端を担ったと言える。

井上伊之助は、84歳でこの世を去るまで、信仰と医療を通じて多くの人々に影響を与え続けた。その生涯は、国境を越えた愛と奉仕の模範として、今なお多くの人々の心に残っている。

もう一度検索