井上光央

井上 光央（いのうえ てるひさ）

井上光央（1932年1月28日生まれ）は、日本の著名なフリーアナウンサーで、特にスポーツ実況での活躍が知られています。東京都に生まれ、巣鴨で育った彼は、東京都立小石川高等学校を卒業後、早稲田大学第一政経学部に進学します。大学時代には放送研究会に在籍し、放送の世界における基盤を築きました。

1955年に新日本放送（現・毎日放送）にアナウンサーとして入社してからは、プロ野球や高校野球、オリンピックに至るまで幅広い実況を担当しました。特に、プロ野球の南海ホークス戦の実況や、「選抜高等学校野球大会」では開会式を17回、決勝戦を22回も務め、『センバツの生き字引』とも称されました。1985年の日本シリーズ阪神対西武戦の実況や、1986年に大阪スタヂアムで行われたオールスター戦での実況も彼のキャリアの中で特筆すべきものです。

また、オリンピック実況も行い、東京オリンピック（1964年）、札幌オリンピック（1972年）、ミュンヘンオリンピック（1972年）でのバレーボール実況が特に記憶に残るところです。1967年にはモハメド・アリとゾラー・フォーリーのボクシング世界ヘビー級タイトルマッチも実況しました。さらに、男子ゴルフの「インターナショナルツアー・ダンロップフェニックストーナメント」の実況を1974年から1984年まで続けたほか、「甲子園ボウル」などでも長年活躍しました。特に「全国高等学校ラグビーフットボール大会」の実況は14回も務めており、その名声を確立しました。

1994年には長年の勤続を経て毎日放送を定年退社。その後は、2002年3月まで大阪芸術大学の教授を務め、2005年3月までは非常勤講師として教壇に立ちました。さらに、2014年以降は講演活動に力を入れている他、落語の愛好者としても知られています。日本笑い学会の理事を経て、現在は監事を務めています。

2016年には「第88回選抜高等学校野球大会」に関するハプニングが起き、彼の名前がGAORAの番組表に誤って掲載されるという出来事もありました。このように、彼の名前はしばしばメディアに登場し、アナウンサーとしての存在感を示しています。

井上光央のエピソードとしては、1955年に大阪に初めて訪れた際、近畿方言の接頭辞「ど」について学んだことが挙げられます。それまで彼は弓道場での経験に基づき、「まんまんなか」と表現していたものの、大阪での暮らしを通じて「ど」が単なる強調の接頭辞であることに気づき、方言への理解が深まりました。「ド近眼」などの表現も、彼は当初は侮蔑ではなく、強調として捉えていました。このような言語に対する感受性が、彼の実況や解説における豊かな表現力へとつながっているのです。

井上光央のキャリアの中で築かれた経験と知識は、アナウンサーとしてだけでなく教育者としても大いに活かされています。

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